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【未来の「学び」プロジェクトー前原】 校長のプログラミング授業日記 その4

Scratchの「学び」方 Scratchサイトへの登録も終わり、子どもたちは自分でノートパソコンを立ち上げ、Scratchサイトへアクセスし、一人でサインインできるようになった。 最初だけ。Chaosは。 2、3回もやれば、子どもたちは3年生でも当たり前にノートパソコンを操作できるようになる。ただ最初の壁があまりにも高いから、教員が嫌になってしまう。でもそこの壁を乗り越える時のC…
松田 孝

松田 孝

2017.02.13
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Scratchの「学び」方

Scratchサイトへの登録も終わり、子どもたちは自分でノートパソコンを立ち上げ、Scratchサイトへアクセスし、一人でサインインできるようになった。
最初だけ。Chaosは。
2、3回もやれば、子どもたちは3年生でも当たり前にノートパソコンを操作できるようになる。ただ最初の壁があまりにも高いから、教員が嫌になってしまう。でもそこの壁を乗り越える時のChaosこそが豊かな「学び」の場であることは、前回にお伝えした。



【未来の「学び」プロジェクトー前原】 校長のプログラミング授業日記 その1

【未来の「学び」プロジェクトー前原】 校長のプログラミング授業日記 その2

【未来の「学び」プロジェクトー前原】 校長のプログラミング授業日記 その3



子どもたちは、最初の時間にScratchで遊んでいるから、早く作品が創りたい。
創りたいのだから、創らせればよい。
でも学級には30人から40人の子どもたちが在籍している。興味・関心、習熟には差があるのは当たり前。
じゃ、やってご覧」と子どもたちにその後を丸投げしたら….。

すぐに作品作りに取りかかる子どももいるだろうけれど、固まってしまう子どもも少なからず出てくる。Scratch作品に触れてはいるけれど、自分がどんな作品を作ればよいのかわからない子、男の子はゲームづくりに挑戦しようとしても、どのブロックを使えばよいかわからなくなってむしゃくしゃする子だっている。一方ではスマートに作品作りに取りかかる子どもも….。
この様々な差をどうするのか。解消できるはずもなく、教員が一番悩むところだ。


授業design!!

授業には、その時間に達成すべきねらいがあり、そのための授業過程があり、具体的な指導がある。
古典的というか従来型の授業designは、ねらいを達成するために指導内容を細分化して、その一つ一つを丁寧に子どもたちに教授する。Step-by-Step。段階的に指導を積み上げようとする。

授業design(その1)ー Scratchサイトのチュートリアル(2107.2.11現在)
スクラッチサイトにアクセスして上部にある「作る」をクリックすると、Scratchおなじみの作成画面とともに右側からStep-by-Step「チュートリアルに従って、あなたのプロジェクトを作ってみよう」とコメントが付されたサイドバーが表れる。


*Scratchおなじみの作成画面と右側のStep-by-Step



①Scratchをはじめよう、から始まって、②自分の名前を動かそう、③飛ぶものを作ろう、④音楽を作る、⑤Race to the Finish、⑥Hide-and-Seek Game、⑦ポン(Pong)ゲームをつくる、⑧踊ろう!、⑨キャッチゲーム、10 バーチャルペットをつくる、という10のチュートリアルが用意されており、しかもそれぞれのチュートリアルについて紹介動画とそれぞれのテーマをプログラミングするのに必要な手順がList of Stepsとなっている。
また隣のタブには、いろいろなものをプロジェクトに追加する方法を学ぶ「使い方」が①効果、②アニメーション、③ゲーム、④物語、⑤音楽の5つ用意され、さらにその隣のタブ「ブロック」には各種スクリプト毎のブロックの説明が一つ一つなされている。

またスクラッチサイト上部バーの「ヘルプ」をクリックすれば、「スクラッチを始める」と「スクラッチガイド」の二つの内容を見ることができる。「スクラッチガイド」には「スタートガイド(英語版)」、「スクラッチカード」にはStep-by-Stepのチュートリアルに示されているスクリプトがカード化されている。さらにビデオチュートリアル(①ビデオチュートリアル、②入門チュートリアル、③ペイントエディタのヒント)も用意されていて、子どもたちが作品づくりをする際には大いに役立つものとなっている。
これさえあれば十分じゃないか、と思うほどの充実ぶり。子どもたちがスクラッチでプロジェクトを作成する時、ここを参照すれば疑問の多くは解決しそうだ。

スクラッチにサインインして、作るをクリック、右側のサイドバーの「Step-by-Step」を一つ一つなぞらせることで基本的な各種ブロックの並べ方やスプライトを動かすプログラミングの技を獲得できそうだ。しかもこのチュートリアルを日本語に翻訳したサイト「コドモとアプリ」がある。

作成者は
先日、このチュートリアルを子どもにチャレンジしてもらいましたが、予想に反してすごく不評でした
原因は・・・
・文章もブロックも英語である(所々日本語になってる)
・GIFアニメが早すぎて、どのブロックを使っているのかわからない
この2点
いい教材になると思っていたので、すごくガッカリしました

そこで
せっかくいいチュートリアルなので、日本語化することにしました」と作成の動機を語っている。本当に感謝!



授業design(その2) WEBサイトのチュートリアル(2107.2.11現在)
WEBサイトでAND検索(Scratch&入門)してみる。
多くのScratch入門ガイドがアップされている。「Scratchではじめよう!」「ゼロからはじめるScratch入門」「Scratchの基本的な使い方ー超入門」「子供もできる!プログラミンング入門ゲーム」等々。これ等ガイドの多くは、本当に丁寧にスクラッチの使い方を解説している。ビジュアルプログラミング言語の解説やプログラミングを学ぶ意義、私がこの日記でも紹介したスクラッチサイトへの登録仕方、そして実際のプログラミング。初歩からだんだんと高度な技を活用した作品作りへとつながる構成。画面を丁寧にキャプチャしてあるので、とっても分かり易い。

プログラミング学習サイト「ドットインストール」のScratch2.0入門は全19回、1回の動画が3分未満で簡潔な説明は、飽きなくてよい。(ただしその分、早口なのは仕方ないか)これを丁寧に視聴すれば、かなりの習熟(Scratch理解と技の習得)が期待できる。

中には書籍で解説した作品を実際に触ってみられるように、完成例を掲載しているサイトもある。またYouTubeサイトもヒットし、マイクラに夢中な子どもたちが、その多くをYouTubeから学んでいることから、これも有効な学習メディアとなる気がする。
WEB検索して、子どもたちに見合うサイトを活用してScratchに取り組ませるのも、けして悪い方法じゃない。



授業design(その3)ーワークショップ
定番は、何と言っても「ネコ逃げ」だろう。
私も昨年の12月に開催された公開研究会(品川区立京陽小学校)のワークショップに参加して、阿部先生から直々にご指導いただいた。(と言っても何十人も参加したうちの一人だが….。)
さすが!」としか言いようがない。
あの短時間でScratchのエッセンスを伝え、そして参加者に「次もやってみたい」とモチベーションを高めるのは、本当にすごいファシリテートだと思う。阿部先生がワークショップを進行するファシリテーター向けに書かれた「ネコから逃げろ! ゲームを使ったスクラッチワークショップ」は必読だ。


*スクラッチサイトにある「ねこ逃げゲーム(サンプル)」


子どもたち一人一人の認知ネットワークの生成、拡充、深化こそが授業

夏休み、悶々としていた。そんなことはお構い無しに時間は過ぎてゆく。
どうやって子どもたちにScratchを「学ぶ」場を拓いたらよいのかを。
ScratchサイトやWEBサイトのチュートリアルを活用したり、「ネコ逃げ」を教えたりすればいいのだけれど….。

悶々とする、その違和感はなんなんだろう?
教える、んじゃない。子どもが「学ぶ」、って?
こだわり。
主体的に「学ぶ」って、子どもの外に客体として存在する知識を獲得させることじゃない!
そう知識って、子どもの認知構造そのものなんだ。

今から20年以上も前になるけれど、私が上越教育大学の大学院へ東京都の現職教員として派遣され、2年間修士課程で学んだ時からのこだわり。
現在、まさに次期学習指導要領の改訂におけるプログラミング必修化をめぐって、議論百出、百家争鳴、諸説紛々、喧々囂々、侃々諤々の様相を程しているけれど、その時も今から2つ前の第6次(平成10年)学習指導要領の改訂に向け「新しい学力観」が打ち出され、「関心・意欲・態度」評価の重視が学力論争を巻き起こしていた。
その多くは、子どもたちの「関心・意欲・態度」は、子どもの行動や態度、表現や振る舞いに現れるとして評価規準なるものの作成がはやりだした。しかし私の恩師である次山信雄(東京学芸大学名誉教授)は、とってもかっこいいことを言っていた。
今改めてその言説を読み返しても、身震いする。

本来、『関心・意欲・態度』に表出されるものは、その子どもの心情・考え・経験などに裏打ちされた体制ともいうべきものであり、そして、一人一人の子どもの体制は、広く、深く、実に様々であり、常に可変的である」(次山信男編著『生活科・社会科の評価とテストの工夫』東洋観 1995.1、p16)
本当にすごい!
そう「体制」なんだけれど、それじゃあまりにも漠然としていて実態がわからない。だから私は次山が言う「体制」は、子どもたち一人一人の認知構造であり、それは認知心理学の知見を援用すれば命題ネットワークの知識構造なんだと考え、「社会科における子どもの『知的性向』評価に関する研究ー定性的評価法としての知識評価を通して」という修士論文を書き上げた。



誤解を恐れずごくごく簡単に言ってしまえば、次のような知識構造論と授業論を展開した。
知識は、いわゆる三角形として表象されるようなヒエラルキー構造、つまりは個別・断片の質の低い知識の上に科学的・本質的な質の高い知識が積み重なって構成されているものではない。しかも授業は子どもの外側に客体としてあるそれをうまく獲得するものなんかではない。

佐伯胖の「知識というものを跳び箱のように考えられているが、むしろ相互が網の目のように結ばれあってどこまでも広がっているものと考えるべきであろう。また上位とか下位とかいうよりも、同じ概念の意義がなんども問い直されながら深まったり高まったりしていく、ラセン型とも考えられるべきもので、跳び箱のように一つが終わったら次へというようなものではないだろう」(佐伯胖「考えることの教育」国土新書 1982.6、p.139)という言説や片上宗二の「知識の平面的な構造の基(起)点をなすものは、点的な知識である。(中略)点的知識は、線的知識に伸びるもの。(中略)点的知識から線的知識への発展は(中略)いくつもの線的知識への道が可能である。しかもこの線的知識は、さらにその伸びる過程で、他の点的知識と結びついたり、あるいは他の線的知識とも結び付いて知識のネット(網)を作り、面的知識に拡がる。(中略)ネットが細かく密になるほど、面的知識の質は高くなる。(中略)面的な知識のネットがある観点から、あるいはさまざまな観点から上方に引っ張りあげられる、あるいは押し上げられることができる程度に応じて、はじめてそこに、立体的な知識の構造が、一つあるいはさまざまに現出する」(片上宗二「社会科授業の改革と展望」明治図書 1985.6、pp90-92)と言うような言説に刺激を受けて、さらに「知識」を客体としてではなく主体の認知構造における「知識」表象としてとらえる認知心理学の知見を重要な手がかりに、私は知識を子どもたち一人一人の認知ネットワーク(命題ネットワーク構造)として考えるようになった。
子どもたち一人一人の内側には、認知ネットワークの結節点となる点的知識がいくつもあって(当然、子どもによって差がある)、その結節点同士が線となって(つまり意味として)繋がり、ある時あるキーワードを中心に一人一人の子どもが自分自身で意味のまとまりを捉えた時、それが立体的知識(考え)となって表出されるんだろう、って今も本気にそう思っているし、それが授業なんだって。

だから、スクラッチサイトのStep-by-Stepのチュートリアルをそのまま子どもたちにやらせようとは考えなかった。その瞬間にチュートリアルの内容が子どもの外側のものとなってしまうから。
どうしたらそれを子どもたち一人一人の内側に生成できるのか。
それには何と言ってもScratchを活用して「表現してみたい!」という欲求を高めることなんだろう。欲求を満たすために子どもたちはチュートリアルに示された内容を自らReference(リファレンス)する。その往還こそが個別的で、それぞれに個性的な認知ネットワークの形成過程なのだと考える。
多くの子どもたちはScratchでゲームを創り、アニメを創り、アートを創りたい。表現したいこととチュートリアルとの往還で認知ネットワークの密度を高め、作品の内容(質)を創造的に高めていくことができればいい。そしてこの認知ネットワークの変容を指導者がよさとして承認することで、子どもたちはさらに意欲的になる。頑然と存在する格差は解消すべきものとしてではなく、一人一人の子どもの個性的なネットワークとして尊重すべきものとなる。Scratchを活用して楽しい表現ができるようになることは、認知ネットワークの変容をメタ認知する力を育み、一人一人の子どもの自信を育んでいく。


そうだ!「Why プログラミング!?」

そんなことを考えていた時、NHKの「Why プログラミグ!?」を思い出した。
改めてNHK for Schoolのスクラッチサイトで確認してみると、番組のスクラッチと放送リストから春休み5回、夏休み3回の番組タイトルとテーマ(技)は次のようになっていた。

「Why プログラミング!?」



そうだ! 導入で子どもたちにScratch作品で遊ばせ、子どもたち一人一人に作品創りへの意欲を喚起する。全員とは行かないまでも多くの子どもは創ってみたい作品をおぼろげながらイメージするだろう。オリジナル作品創りへの意欲を抱かせながら、その過程におけるReference(リファレンス)として「Why プログラミング!?」を活用しようと考えた。

どのようにReference(リファレンス)させ、一人一人の作品創りにつなげていくか。次回は、いよいよ子どもたちの取り組みだ。



【未来の「学び」プロジェクトー前原】 校長のプログラミング授業日記 その1

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