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【未来の「学び」プロジェクトー前原】 校長のプログラミング授業日記 その2

宿題やってきた? 2学期のプログラミング授業が始まった。9月20日(火)、6年2組の子どもたちを前に、第一声である。 「宿題やってきた?」 反応がない....。 「??」 子どもたちは私が何を言っているのか、分からないのだ。 「覚えている? 1学期の終業式で、校長先生、みんなに宿題出したよね。夏休みの間に NHK for School の『Whyプログラミング』を見てくるよう…
松田 孝

松田 孝

2016.11.14
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宿題やってきた?

2学期のプログラミング授業が始まった。9月20日(火)、6年2組の子どもたちを前に、第一声である。

「宿題やってきた?」
反応がない….。
「??」

子どもたちは私が何を言っているのか、分からないのだ。

「覚えている? 1学期の終業式で、校長先生、みんなに宿題出したよね。夏休みの間に
NHK for School の『Whyプログラミング』を見てくるようにって」
「あっ、見た」「……」「見た」
「….」

改めて「Whyプログラミング、見た人?」と問うと、約半数の子どもが挙手した。
Whyプログラミング」はプログラミング教育の普及啓発をねらいに、NHKが作成した子ども向けの教養番組である。この3月下旬に5回放映され好評を博し、夏休みに続編3回が放映された。(今年の5月に行われたScratchDay 2016 in Tokyoでは、 番組ディレクターの林一輝氏と同番組のプログラミングを監修した阿部和広氏が対談し、企画や内容について語っている。*)
*http://japan.zdnet.com/article/35087480/
*http://www.famitsu.com/news/201605/25106647.html



子どもたちの反応は、まあ想定内。なので、教室に設置してある大型モニターにNHK forSchoolのサイトにある「Whyプログラミング」のコンテンツの中から、夏休みに放映された第8回目(最終回)をミラーリングして映し出した。

「見ていない人もいるようなので、全員で少し見てみよう」
と言って、前半の約4分間を子どもたちと一緒に視聴した。

第8回目はカエルジャンプが問題場面として設定されており、具体的スキルとして変数を学ぶ内容となっている。番組を視聴している子どもたちの様子から、Scratchのプログラミングの雰囲気ー様々なブロックを下に並べることでプログラミングできる、は感じ取っていた。(まあ、1学期の導入でTickleーScratchライクなビジュアル言語、を触った経験もあるのだから、当たり前といえば当たり前か….。この回の主題である変数についての解説は、番組開始6分以降になるので視聴しなかった)

とにかく2学期の最初のプログラミングの授業、Scratchの導入。
子どもたちに夏休みの宿題も出していたことから(宿題を出しっぱなしにしないという私の姿勢を示す意味でも)「Whyプログラミング」を視聴させ、Scratchというビジュアル言語の存在を知らせ興味をもたせたかった。
(今思うと、ここはやはり3月下旬に放映された第1回目の番組「壊れた魚を動かせ」を視聴させた方がよかった(涙) Scratch画面の説明や順次の命令で魚を動かすプログラムが基本であることを伝えることができたのに。う〜ん。残念!)
ここまで約15分。



今回は6年生の授業風景を中心に、ほぼ同様の授業を3、4年生にも行ったので反応の違い等を適宜加えながら、その様子を報告しようと思う。
視聴が終わって、黒板にScratchと板書した。
2学期のプログラミングの授業はScratchというビジュアル言語を使って「学び」を進めていくことを子どもたちに伝える。

Scrachは、アメリカの大学(MITメディアラボ)で子ども(初心者)のために考え出された言語で、今、世界中でとっても多くの人たちが使っているんだ。Scratchサイトの登録者数は世界中で1200万人を超え、日本でも10万人を超えたそうだよ。日本のプログラミングの教室や講座では、一番多く(36%)使われているんだ*」
と話した。
子どもたちは「ふーん」という表情で聞いている。
*http://www.soumu.go.jp/main_content/000361430.pdf


早速Scratchサイトへアクセス

黒板のScratchの文字の後に「.mit.edu」と書き加えた。

「見てて。校長先生がやってみるから」

と言って、ミラーリングしてある私のChromebookのWEBブラウザに板書したURLを入力し、enterキーを押せばScratchサイトが開く。WEB画面のやや右上にScratchの紹介動画(01:37)があるので、それを視聴する。
アニメーション、物語、ゲーム、アート、音楽、シミュレーション等々。Scratchでプログラミングすれば色んなことができることにワクワクさせようと思ったけれど、紹介動画のテンポが少し早かったかな?

「では、ノートパソコン開いて」
「今、校長先生がやったことを皆んなにやってもらうよ」
「大丈夫?」

6年生の教室では、子どもたちは私の目を見て「大丈夫ですよ」と静かに応え、3、4年生では「大丈夫!」って元気な声が返ってきた。

「もし操作がわからなかったら、黙って手をあげてね。校長先生と大澤先生(担任)が応援
しに行くから」

「そうだ! できた人が友だちに教え合ってもいいから、それがしやすいように机を班の形
にしようか」

「友だちが『教えて?』って言って来た時、『うるせーな! そんなもんもわかんないのか
よ』なんて言う人いないよね。『どうしたの? こうすればいいんだよ』と教えてあげて。

そうすれば尋ねた人は『ありがとう』って言えるよね」

「隣りや周りを見て、困ってそうだったら『こうすればいいんじゃない』ってさりげなく伝
えてあげると素敵だし、かっこいいよね」

「こういうことができる学級って、温かい雰囲気になって安心して色んなことに挑戦できる
ようになるんだよ」



とさりげなく、どころではなく「思いっきりのメッセージ」を子どもたちに伝えた。
子どもたち同士の豊かな関係性を構築するには、この援助要請や能動的援助ができることが大事なポイント。このことが道徳授業のように改まることなく、プログラミングの授業では自然とその場が開ける。こんなチャンスは他教科の授業ではそんな簡単には訪れない。実際に子どもたち同士がお互いに教えあっている場面(まずは端末の操作についてだけれど)が数多く生まれ、それを「いいね」「ありがと。素敵だね」と声かけできれば、子どもも私も嬉しくなる。
プログラミングの授業で、学級づくり!

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*Chromebookの操作を教えあう子どもたち



「じゃ、やってみようか」

子どもたちが机を動かし、3、4年生の授業ではChromebookを開いた途端、たくさんの手が一斉に挙がった。

「何? 何? どうしたの?」
Chromebookを開いた途端、子どもの端末の多くは管理コンソールへのログイン画面。

「左下のゲストモードでブラウジング、をタップして、次にChromeブラウザのアイコンをタップすればWEBブラウザが開いてURLを入力できるからね」

さすが6年生はこの説明でほぼほぼURLを入力し、紹介動画の視聴に移っていった。
けれど大変だったのが3年生。ローマ字を学んだばかりで、キーボードからの文字入力がままならない。

「入れたのに、画面が開きません」という声があちらこちらから。
tとf、hとn、aとq、iとl、.と, の打ち間違い….。
「r がありません」「m もありません」
その子どものところへ行って、初めて気が付く。

「ガーン」
本当に「ガーン」
キーボードの表示文字が大文字じゃん!

そうだよ。Chromebookは6年生から借りてくるんだけれど、6年生の1クラスは28人で3年生は1クラス38人だから10台足りない。その分他クラスから借りてきたのがWindowsタブレット。キボードが付いているからChromebookと同じだと考え操作説明していたけれど….。



1学期にiPadを活用していた授業では感じなかったが、Chromebook等、キーボード操作を伴う端末を使っての授業になって、操作スキルの習熟の重要さが身に沁みた。
どこで子どもたちはキーボード操作を学べばよいのだろう。文字入力なら、ローマ字を学ぶ国語が妥当だけれど、年間を通じてのタイピング練習は必至だと思う。

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*手前がWindowsタブレット。右奥の子どもが使っているのがChromebook。キーボードの文字表示が違う(涙)



この混沌(混乱?)の時をやり過ごし、ほぼ全員が紹介動画を視聴した頃を見計らって、

「すごいね。Scratchでプログラミングすれば、色んな作品が作れるんだね」
「皆んなだったら、何を作ってみたい?」

と煽ってみても、6年生の反応は意外と大人しい。

「2学期のプログラミングはScratch使って、皆が一人一人作品をつくることがゴールだよ」と伝えた。

3、4年生ではラズパイのScratchを使ってMinecraftを操作することを伝えた瞬間、多くの子どもたちが前のめりになってきた。そんな反応を受けて、「マイクラやったことあるの?」と尋ねると8割方手を挙げた。「おれ、Mod使ってやってるよ」なんて言う子どももいる反面、つまらなそうに聞いていた子どもが数名いたことはしっかりと担任と共有した。
ここまで約15分。



最後の15分間は、ゴールであるScratch作品に実際に触れさせ、子どもたちの興味を沸き立て、併せて中身を見せることで様々なプログラミングの仕方があることを伝えようと思った。

「じゃ、次はscratch.mit.eduの後に、/studios/1730856/ を入力するよ」
「校長先生やるから、見てて」

先ほど同様、ミラーリングしてある私のChromebookのWEBブラウザに板書したURLを入力し、enterキーを押せばScratchスタジオのSTEMON教材*に移り変わる。
このサイトは、STEMONと言って首都圏でプログラミング学習塾を展開する塾が管理している。STEMONは小学生向けのプログラミング・STEM教育のスクールで、実はSTEMONを運営する株式会社 ヴィリング の代表中村一彰さんには、前任校時代にプログラミングの授業を行っていただいた経緯がある。私が今年度、前原小学校でプログラミング授業を実施できるのも、中村さんの先行実践を見てきたからで、本当に多くの示唆をいただいた。今回もこのScratchを授業で取り扱う際にも多くの助言をいただき、STEMON教材サイトへアクセスすることをお許しいただいた。
*https://scratch.mit.edu/studios/1730856/


Scratch作品への触れさせ方

子どもたちがScratchの作品に触れる方法はいくつかある。

一番オーソドックスなのは、Scratchサイトにある【注目のプロジェクト】や【注目のスタジオ】から面白そうな作品を選ぶことだろう。NHK For Schoolの「Whyプログラミング」には新しく「ワイワイプログラミング」というコミュニティーサイトがオープンしたので、そこから楽しそうな作品で遊ぶこともできる。
しかし今回の授業では、STEMON教材サイトを活用させていただいた。理由は使い方が日本語で書かれており、作品もシューティングゲーム、迷路、デジタルアートなどがスタジオ内に万遍なく紹介されていて、しかも初めての子どもたちが触れるには手頃なプログラミング内容となっている。

一つの作品が出来上がる過程そのものが3つくらいの作品として公開されているのも他にはない特徴である。(これが、結構授業で使える!)
ScratchサイトやNHKのコミュニティー作品は、みな凄すぎる! 子どもたちがユーザーとして鑑賞したり遊んだりしたりするには良いかもしれないが、プログラミングの中身を見た瞬間、内容に圧倒されてしまう。

「校長先生、やってみるね」と言って、【コウモリを狙え】や【ドレスアップ】という作品
で遊んで見せ、中身のプログラミングも紹介した。
「やってごらん」と言うと、子どもたちはそれぞれの興味で作品にアクセスし始めた。

「校長先生。これどうやるんですか?」
「ゲームの仕方がわかりません」と聞かれても、私が作った作品でもないから「わからない。ごめんね」と言うしかない。

バグもあって、これから子どもたちが作品作りをする際に遭遇しそうな状況を体験できるのも、このスタジオのいいところかも知れない。
これで約15分。合計45分の1単位時間がやっと終了。


さあ、次の時間は?

次の時間は、子どもたちが作成するScratch作品を保存したり、公開したりするためのアカウント作成。WEBサイト見れば、アカウント作成は簡単そうに見えるけれど、実際の学校現場での顛末は…。乞うご期待!
2学期の最初のプログラミングの授業、Scratchの導入。
(民間の塾やイベントでは集まる子どもたちのモチベーションとスキル、そして参加する人数と支援するスタッフなど「学ぶ」環境が違うから、こんな導入は必要ないよな….)



続く。