こどのものプログラミング教育を考えるメディア

【未来の「学び」プロジェクトー前原】 校長のプログラミング授業日記 その3

Scratchに参加! 1時間目が終わって引き続きの2時間目である。 いよいよScratchを使ってプログラミング、なんだけれどその前にやることがある。子どもたちが創るプログラミング作品のプロセスを保存したり、作品を公開したりするためにScratchに参加しなくては。 2学期の授業は、子どもたちが1学期(6時間の授業を実施)に「面白い!」と感じたプログラミングについて、多少の技…
松田 孝

松田 孝

2017.01.05
このエントリーをはてなブックマークに追加


Scratchに参加!

1時間目が終わって引き続きの2時間目である。
いよいよScratchを使ってプログラミング、なんだけれどその前にやることがある。子どもたちが創るプログラミング作品のプロセスを保存したり、作品を公開したりするためにScratchに参加しなくては。
2学期の授業は、子どもたちが1学期(6時間の授業を実施)に「面白い!」と感じたプログラミングについて、多少の技術的習熟を図ることにねらいがある。Scratchを活用して、個と協働の「学び」の場を拓くことで、そのねらいに迫っていこう。

じゃ、これから皆んな一人一人がScratchに参加するよ

と言って、ミラーリングしてある大型モニターで参加の手順を説明していく。

最後まで説明するから、モニターを見ながら話もしっかり聞いていてね
大事な所は、黒板にも書くから
最後まで説明し終わったら、皆んなにもやってもらうよ。分からなくなったら手を挙げてくれれば応援にいくし、友だち同士教えあってできれば最高だね
しつこいまでの援助要請と積極的的援助の大切さをアピール。

Scratchへの参加手順は、基本3つ。

一つは、ユーザー名の登録とパスワードの設定。
一つは、生まれた年と月、性別、国の登録。
一つは、電子メールアドレスの入力。



「Scratch アカウント」で検索してWEBサイトを見れば、「アカウント登録は無料。登録すればサービスを利用できるため便利」と書いてある。そしてサイトそのものには「Scratchの登録は簡単です」とも…。これから全国でプログラミングの授業が始まれば、多くの学校がScratchを利用するだろうけれど、当然登録するよね? 確かに少人数で、指導者の目の届く範囲での登録作業は簡単なのだろうけれど、本校は3年生が2学級76人、4年生は3学級で85人、5年生は2学級で79人、6年生は3学級で86人の子どもが在籍している。これは何を物語っているか….
ムンクの叫び!

Scratchサイトに参加するなら、前日までにユーザー名を子どもたちに考えさせておかなければ絶対ダメ! それもローマ字で!! あわせてパスワードも!!!



ここの対応の仕方に、実は指導者の教育観が反映されるんだ。
登録の手間を省きたいのなら、子どもたち一人一人にユーザー名等を考えさせるのではなく、指導者が児童名簿順に「学校名+出席番号」等をユーザー名として割り振った方が絶対に効率的。そしてパスワードも一括同じにしてしまう。その後の管理も断然楽。
でも、でも、だ。
子どもたちが公的な授業で、しかも主体的にネット社会へ出て行く最初の機会だととらえれば、情報セキュリティーについて考える最高の「学び」の場。単なる作業としてできるだけ簡単に登録を済ませてしまおうなんて発想は、勿体なさすぎる。確かにこれまで情報セキュリティー(&モラル)については、特別に時間を設け(例えば土曜授業参観の一コマ等として)、民間のCSR活動の一環として「セキュリティー教室」等にその指導を委ねてきたことも多々あった。しかしScratchサイトへの参加は子どもたちにとって自分事で切実。だからこそ手間をかけ、丁寧に対応するに値する時間であることを理解したい。絶対に!

Scratchのサイトへの参加をクリックして、登録画面を開く。




*Scratchのアカウント作成はとても簡単! 少人数で指導者の目の届く範囲で行えば簡単なんだろうけれど、これをいざ授業で30人から40人の子どもたちと行おうとすれば….。指導者はムンクの叫び!


STEP1:ユーザー名の登録ー情報セキュリティ

ユーザー名、考えてきた?
本名は使わないでね、ってあるけれど、なんで本名じゃダメなんだろうね

すかさず子どもから、「犯罪」、「危ないから」等の言葉が返ってきた。
「犯罪、って? どんな危ないことがあるの?」と言葉の具体を尋ね、ここではプライバシーの流出の危険性について話をしよう。Scratchサイトに限らず、もし本名を登録してしまえば、ちょっとしたきっかけで、そこから住所も電話番号も家族構成もわかってしまう危険性が生まれる。もしかしたら通っている学校もわかってしまうから、通学路で待ち伏せだってできてしまうんだよ。そして手に入れた情報でその人に成りすますことも・・・。

どこまで突っ込んでいくか、子どもたちの発達段階にもよるだろう。指導者の見極めが試される所。ネット社会のメリットとともに不特定多数、匿名、非対面が産むデメリット(虚偽、だまし、誇大、偏見、無責任、過激、残酷)等について考えていく初めの一歩としたい。 

パスワード、考えてきた? 忘れちゃだめだよ。ちゃんと覚えていられる?
すぐ忘れちゃうから生年月日をパスワードにするなんて、絶対ダメなんだよ」と言って、芸能人が名前と生年月日からパスワードを類推され、保存してある写真を閲覧・流出させられたり、メールを勝手に読まれたりしていた事件等について話すことも効果的だと思う。そしてメールに大変重要な情報が書かれていたり、その人になりすまして嘘の内容のメールを送ったりしたらどうなると思う、と問いかけることもセキュリティを自分事として考えるきっかけとなるんじゃないかな。



今、学校でICT機器が導入され始めて、ようやくICT教育の推進が始まろうとしているときに、このセキュリティに象徴される情報化(ネット)社会のデメリットを前面に出して、その推進に不安を覚え消極的な対応を取る人がいるが、それは違う。
自動車の運転や子どもであったら自転車の乗り方に例えてみれば、分かり易い。

空間移動において自動車や自転車はとっても便利な乗り物(ツール)であることは、全ての人が了解できること。しかし自動車や自転車の運転には危険がついて回る。全日本交通安全協会によると、平成27年には4,000人以上の方々が交通事故で尊い命を落とされている。だからこそ自動車運転は免許制だし、自転車の安全な乗り方等については学校は毎年「交通安全教室」等を開催し、安全教育に尽力している。

情報化(ネット)社会の進展も、私たちの生活に計り知れないメリットをもたらした。そして総務省の調査によると、現在はスマートフォンによるインターネット利用が急速に拡大しているという。着目すべきは20歳代のスマホによるインターネットの利用率が90%を超えている点。(*) 日本でスマホが普及するきっかけとなったのは2008年のiPhone発売であることを考えれば、当然20歳代は学校で情報化(ネット)社会の歩き方は「学ん」でいない。だって彼らが義務教育を受けていた時代、スマホはほとんど普及していなかったんだから。だから今、情報セキュリティやモラルにかかわって様々な問題があちらこちらで起こってくる。情報化(ネット)社会のデメリットについては、「正しい理解で、正しく怖がる」態度の育成が大事だと思うけれど、「怖がって」ばかりでその活用を禁止したり、抑制したりしてしまったら本末転倒。情報の積極的活用でより豊かな社会の形成に関わろうとする態度を育成することこそが、第4次産業革命の真っ只中を生きていく子どもたちに対する学校の使命なんだから。

Scratchサイトへの参加」は、子どもたちが情報化(ネット)社会へ踏み出す初めの一歩。登録作業は一見何気ない行為ではあるが、実は子どもたちに客体(情報の消費者)から情報化(ネット)社会で生きて行く主体としての覚悟を促す行為。今後彼らが遭遇するであろうアナログ社会では想像もできなかったネットビジネス(キュレーション、アフィリエイト、アドセンス等)に対しても「正しい理解で、正しく怖がる」態度とともに、それ等ネットサービスをも効果的に活用して、より豊かな社会を形成する意欲と技術を学んでいってほしいと本気で願っている!

付け加えれば、ICT教育の推進に消極的な対応をとる理由として、情報機器の使用に関わる健康被害(視力低下やストレートネック等)をあげる人も極めて多い。さらには依存の問題。何事も夢中になることは微笑ましくもあるが、度が過ぎ依存となれば問題は深刻化する。ネット依存についてはその度合いを確認する診断テストもある。自身の状況を確認して具体的な対応をとるとともに、根本は情報化(ネット)社会に対する主体性の確立が急務。主体は、自らの判断に責任をもつ。情報化社会のメリット・デメリットを理解し、その中で自らはどう行動することが良いのか責任をもって判断する覚悟を促すことこそ、この問題の解決策なんじゃないかな。
(*)総務省「平成27年通信利用動向調査
http://www.soumu.go.jp/main_content/000445736.pdf

そんな話をしながら登録作業を進めるが、子どもたちにとって一番のネックはタイピング。
高学年の子どもたちは、それなりにキーボードからアルファベットを入力するが、3年生は教科書を出し、ローマ字一覧表とにらめっこしながら悪戦苦闘。だって国語でローマ字を学習したばかりだから。
頑張れ!
かわいそうなのは、せっかくのユーザー名を打ち込んでも、「すでに使用済み」のメッセージが出てくる。どうするんだ。新しいユーザー名など考えていたらそれだけで時間が過ぎてしまう。
ここは一計。

そのあとに数字をつけようか」と私。
うん」とうなずいて、「01」を付け加えて問題クリア。
子どもたち一人一人への対応は、正直大変。
でも、でも大切な「学び」の場!



ユーザー名とパスワードを入力できれば、右下の「次へ」をクリックして次の画面へ。


STEP2:生まれた年と月&性別&国の設定ー人権課題(LGBT)への気付き

生まれた年と月の設定では、改めて子どもたちが21世紀(2001〜2100)を生きている事実を伝えたい。そう子どもたちが切り拓いていく時代は20世紀ではなく、元号で言えば昭和でもそして平成でもないことを。

問題は性別だ。
えっ? 何が問題? 難しい事なんか何もないじゃん、と考えたらとんでもない。一番難しい問題だし、自分の中では正直、どう対応することがよいのか整理ができていない。是非、これをお読みの皆さんの対応策をお教えいただきたい。
キャプチャーした画面を見ていただければ、性別はラジオボタンで男、女を選択するようになっている。が、その横にもラジオボタンがあって四角がある。
なんなんだ!

正直に告白すると、最初に授業をした6年生の学級では、ここを「しらっ」とした顔で次の国の設定の説明に移った。
すかさず子どもから、「性別の右の四角には、何も入力しなくていいんですか?」と質問が出た。さあ、なんと答えよう。人権課題だよ!!

突然だが、東京都教育委員会は毎年東京都の全教員に、「人権教育プログラム」を配布する。毎年改訂が行われ、各人権課題の最新情報もしっかりと掲載されている。都教委や地教委は主催する人権課題にかかわる研修ではこの「人プロ」を必ず持参させ、活用を図っている。だって東京都の教育目標を達成するための基本方針の第1が「人権教育の推進」だもん。当たり前と言えば当たり前だけれど、この意気込みは凄い。毎年の改訂、印刷、配送等の費用も相当だろうけれど、内容は活用するに値する素晴らしい資料集だ。
そこの人権課題17&18に「性同一性障害者」、「性的志向」に関する人権課題が取り上げられている。しかし新しい課題ゆえに、具体的な指導法についての記述はない。
さて、どうしよう…。

「性別」って何も身体を基準に分けられるだけのものじゃない、ってことを伝えたらよいのかな? 本人の意思による性別(心の性別)や好きになる対象にかかわる性別(好きになる性)がある、っていうことも知らせたらよいのだろうか。当然発達段階にも十分な配慮が必要なことはわかっている。

LGBT(Lesbian,Gay,Bisexual,Transgender)は、2015年の電通総研の7万人を対象に行った調査によると7.6%、約1,000万人と推定されるらしい。この調査は20代から50代への調査であるが、義務教育段階の子どもたちにもそれなりの割合でLGBTが存在し、誰にも言えずに悩んでいるかも知れない。だとすると性の多様性について、まったく触れないということはできないんじゃないか。
渋谷区では「同性パートナー条例」が成立したし、続いて世田谷区や兵庫県の宝塚市も同様の制度を始めたという。
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0423-004032.html

性別の登録については、その難しさをまずは指導者がしっかりと受け止め、高学年では「身体だけを基準に性別は分けられないこともある」の指摘は必要かもしれない。



次の国の設定に移ろう。

これは日本が「Japan」であることを伝え、スクロールして見付け出させたい。その過程で世界にはいっぱいの国があり、それぞれの国は言葉も文化も歴史もみんな違うことに気付かせたい。グローバル化っていうのは、その人たちと一緒に生きることなんだ、ということを。
アルファベットで綴られた国名をGoogleEarthで検索してみるのも一興だ。ちょっとしたことだけれど、これで子どもたちが世界や地球のスケールを感じるきっかけとなれば言うことなし。
中学年はローマ字を習ったばかりだから、アルファベットの並び順を確認したり、Unaited Stateってどことか、何故一番最初なのか、などについて先生がコメントしてもいいかも。
もし対象が6年生ならば、地域の存在も知らせておくことも大切かもしれない。
「国と地域って違うのかな?」
外務省のHPには国・地域一覧が掲載されており、その他の地域として「北朝鮮、台湾、パレスチナ自治政府、香港、マカオ、北極、南極」が掲載されている。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html

Japan、ってどこにありますか?
スクロールしてご覧。H・IのあとにJがくるからね

押し間違えちゃったんだけど?
大丈夫だよ。もう一度タップしてご覧。ほら、大丈夫でしょ

子どもたちは「ほっ」と、安堵の表情を浮かべる。
この子どもたちにとって、校長先生は「とってもいい人」
そんな関係が私と子どもとだけでなく、担任教員そして子どもたち同士で自然と豊かに構築されるこの時間こそが、一見混沌でめちゃくちゃに見えるかもしれないけれど、とってもとっても貴重な時間となっていることは間違いない! 確信する。
これこそが学校で、みんなで「学ぶ」喜び。楽しさ。醍醐味だ!


STEP3 アカウント承認ー教員の校務用メールアドレス

子どもたちは、基本メールアドレスはもっていない。gmailをはじめ多くは13歳未満のアカウント作成はできない。
どうする?

子どもたちの保護者のメールアドレスを入力させるか? それとも担任個人のメールアドレスは絶対に嫌だよな。ならば学校のメールアドレスか。
民間のイベント等では、どう対応しているんだろう??
学校でScratchを活用するとなった時、ここが最大のネック。

でも、よかった。
本校では、年度始め(4月)に教員にiPadを配布した際に、プライベートとは別に学校で使用するgmailアドレスを一人一人に取得させた。(参考までにこのgmailをAppleIDとして使用)このアドレスのおかげで各種資料等をいちいち印刷することなく教員と共有できている。だからここでは担任が学級の子どもたちの保護者としてメールアドレスの確認をすることとした6

子どもたちは黒板に綴られた担任のgmailアドレスを一所懸命、入力する。
何度も、頑張れ。
必死の子どもたちの表情は、健気で可愛い。
メールアドレスを入力して、次へをタップすると….、

Scratchへようこそ!
無事にログインできました! のメッセージ。

Congratulation!

この時の子どもたちの安堵した表情、笑顔を見ることは何事にも変えられない喜びだ。
教員一人一人にgmailアドレスを取得させておいて、本当によかった。担任が子どもたちの保護者となって、承認できる。(ただgmailアドレスの取得は、結構めんどくさいことはお伝えしておく。でも便利極まりないこともお伝えしておきたい)

そう。是非メールの承認をしてほしい。メールを承認しなくても子どもたちはScratchを使えるが、作品が公開できなかったり、Scratch画面に、オレンジのバーが表示され作業が面倒くさくなる。「作品を共有したり、コメントしたいときは、あなたのアドレスmaehara.×××@gmail.comに送信した電子メールのリンクをクリックしてください」とメッセージがある。
絶対に、承認しよう。
正直に告白する。最初は担任に、30名から40名の子どもたちのメールにその時間内にいちいち承認していたら、他のことができなくなるから「承認しなくてもいいよ」と言ってしまった。
この一手間が子どもを大事にする、ってことなんだよ。作業はやりづらいし、何といっても作品が公開できない。それは評価とも関わって、とっても重大なことになる。


カオス(Chaos)こそ、豊かな「学び」の場!

登録作業を振り返ってみる。

ここには人手が是非ともほしい。さすがに担任一人では厳しいだろう。でもだからと言って、すぐに「支援員!」とは言わない。専科授業等でその時間に受け持つ授業がない教員がサポートに入ればいい。本校で言えば、高学年は音楽、図工、そして6年生は家庭科の授業を専科教員が受け持っている。教務&生活指導主任軽減として、講師時数が9時間付与され、低学年だって学級数の関係で10時間の講師措置がある。

今、教員の多忙が大きな話題となっているが、この時間程度のサポートに入れない訳じゃない。確かに子どもたちが登校すれば、彼らの安全と人権を守るのに最大限の注意を払い、丸一日緊張感の中で職務を遂行する職場はそうないだろう。だから授業のない空き時間は教員にとってかけがえのない時間であり、それは多少緊張感を緩め子どもたちのノートを見たり、テストの採点をしたりすることができる至福の時間でもある。その貴重な時間に他学級のサポートに入るなんて冗談じゃない、って言われるのは覚悟に上。
それでもサポートに入りたい。入ってご覧よ。子どもたちが健気に、必死で課題に取り組んでいる姿を目の当たりにしたら、絶対にフォローしたくなる。子どもが困ったり、戸惑ったりしていればさりげなくサポートする。自然に子どもから「ありがとうございました」のお礼の言葉が返ってくる。「うん。頑張って」「はい!
教室を見渡すと、友だちにやり方を教えている子どもがいる。側に行って「教えてくれて、ありがとうね」「◯◯ちゃん。教えてもらってよかったね」「うん。ありがとう、って言った

子どもたちそれぞれが課題に取り組む様子を俯瞰すれば、そこには学級の人間関係が反映されていることに気付く。いろんな個性をもった子どもたちが集まり、様々な関係性を築いている。それをより豊かなものにする、さりげない示唆ができるのは教員だけ。だって一人一人のバックボーンやそれぞれのよさを含め内面を知っているのだから。
やさしくフォローされたり、褒めたりされれば、子どもたちは教員を尊敬し、信頼する。本校の新規採用の女性教員は、プログラミングの授業に取り組みながらこんな関わりを重ね、学級&学年の子どもたちと素敵な関係性を構築していった。
毎回じゃない。最初の一回だけ。最初の最初だけ。

Congratulation!

悪戦苦闘の末、見事登録完了。残り時間はSTEMON StudiosのScratch作品で遊んだり、友だちの登録作業を手伝ったり。
子どもたちの登録状況と残り時間を見計らって、
登録がちゃんとできたか、試験をしよう」と言って子どもたちを「どきっ」とさせた。
登録できたつもりでScracthのサイトで遊んでいるけれど、実は登録したユーザー名やパスワードを打ち間違えているかもしれない。

じゃ、校長先生がやってみるからね」といって、大型モニターにミラーリングしながら、自分のScratchサイトから一度サインアウトする。
そして改めてサインインの入力。この時、あえてログインできない状況を見せることで子どもたちは「はっ」とする。
何故、ログインできないのか? その理由を子どもと一緒に確認することが大事だ。
(1)サインインの際に、登録したユーザー名、パスワードを正しく入力できなかったか
(2)登録そのものが打ち間違いで、違った登録になっているか

ドキドキの登録確認テストが始まる。
はたして多くの子どもたちは、再びサインインできた。
一方、予想通りサインインできない子どもがいる。
改めて原因を探ると、やはり登録時の入力ミスの可能性がある。悲しそうな顔をみると切なくなるけれど、これも現実。ネット社会、デジタル社会の現実を突きつける。そして再登録を促す。

ここまで読んで、「私だったらワークシートを用意して、手順を示して一つ一つ確認しながら作業させるから混乱・混沌なんかさせないわ」と思う人がいるだろう。
それも一つの指導方法。
指導者の授業designに関わる問題だと思う。



Scratchサイトへの登録がねらいであるから、ワークシートを作成し手順通りに進めさせれば、効率的に作業は進む。失敗を極力減らすことで、正確さは増す。
でもChaosも悪くない。指導者はムンクの叫び! かもしれないが、実はChaosこそが東大の藤本先生が言うGameデザインの現れであり、子どもたちにとっては豊かな「学び」になっているんじゃないか。チャレンジや失敗を推奨しながら、なるべく教えないで、やっているうちに自然と学べる授業designの方がワクワクするし、何といっても楽しい! 自分も子どもたちと一緒になって課題を解決する仲間であり、ちょっと先輩のFacilitatorになった気分。
結果、4年生以上は全員登録が完了できたし、3年生は40人中10人が登録を完了することはできずに、授業外に担任が登録作業を請け負った。
この事実をどう評価するか。古典的教育デザインとの葛藤に悶々としてくる。
でも「豊かさ」、ってやっぱりChaos(混沌)にあるんじゃないか。そんな風にも思えてきた。

今回はこの時間を総合的な学習の時間で2単位時間確保したが、Scratchを通してプログラミングを学ぶ直接の時間とはなっていない。
でもプライバシーやセキュリティ、人権課題等を学び、ローマ字入力の活動が基盤となるとってもとっても大事な時間。国語? 道徳? 特活? これを読む全国の指導主事の皆さんはどこに位置付るだろう。
私も5年間指導主事を勤めててきたけれど、各教科・領域のねらいと全体計画、指導計画を勘案しながら、様々な位置付けが可能なように思う。

カオス(Chaos)こそ、豊かな「学び」!

Scratchサイトへの登録はそんなことを実感できる、とっても有意義な時間だ。
皆さんにも是非、体感してほしい。

ムンクの叫び! を。



【未来の「学び」プロジェクトー前原】 校長のプログラミング授業日記 その1

【未来の「学び」プロジェクトー前原】 校長のプログラミング授業日記 その2