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2018.9.4
2018.9.4

うんこライター、ガチのプロに取材する。〜電通が誇るAIプロフェッショナルにインタビュー!〜


広島カープとか、うんことか、
ゆる〜く進めてきたコラムですが、今回はガチ!

プロフェッショナルの話を聞きたいと広報の菅野さんに相談してみたら、
バナーを自動生成する『ADVANCED CREATIVE MAKER
(アドバンストクリエーティブメーカー)』開発の
メンバーの皆さんに話を聞けることに!(菅野さんありがとうございます!)

『ADVANCED CREATIVE MAKER(アドバンストクリエーティブメーカー)』
詳しくはこちら→http://www.dentsu.co.jp/news/release/2018/0516-009538.html

電通グループのAIプロジェクトを統括するAI MIRAIの福田宏幸さんと
電通デジタル、アドバンストクリエーティブセンターのグループマネージャー
和泉興さんにインタビューさせていただきました!

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まずはお二人が所属しているAI MIRAIやアドバンストクリエーティブセンターについて教えてください

和泉さん「そうですね。関係性が複雑なのでちょっと整理すると、アドバンストクリエーティブセンターは電通デジタルのイチ組織なんですが、AI MIRAIは電通グループ全体のAIプロジェクトを統括するチームなんです。」

福田さん「AI MIRAIは、世の中的にもマーケティング領域でのAI活用が急速に進んでいたこともあって、クライアントさんの要望に応えるためにAIの知見を蓄えるチームをつくる目的で2018年1月に誕生しました。
マーケティングは電通のコアでもありますしね。」

和泉さん「それまでも個別にはAIの案件はあったんですが、グループ全体で取りまとめる体制がなかったんですよね。」

福田さん「そうそう。それまでも電通内でAIプロジェクト(※2017年3月~)はあったんですよ。
例えば私が担当していたAIコピーライターの『AICO』やテレビ視聴率予測システム『SHAREST(シェアレスト)』も
AI MIRAI発足前から進んでいたプロジェクトです。

グループ全体で、知見を共有できる体制が整ったのは、AI MIRAI発足後からですね。」

今年の3月には『AIクリエーターズクラブ』が発足したそうですが。

福田さん「はい。『AIクリエーターズクラブ』は、AIを活用した最先端のクリエーティブ開発に特化した専門チームとして発足しました。AICOや日本語AIの自然対話サービス『Kiku-Hana(キクハナ)』など、AIを活用したクリエーティブ開発の事例が増えてきたことを受けて、電通と電通デジタルが共同で立ち上げたものです。

電通グループのプランナーやコピーライターの知見を掛け合わせ、AIだけでも、人間だけでもできない新たな表現を生み出すことにチャレンジしています。

電通のAIコピーライターAICO
詳しくはこちら→ https://dentsu-ho.com/articles/5128

SHAREST
詳しくはこちら→ http://www.dentsu.co.jp/news/release/2017/0616-009318.html

電通グループとしてAIに取り組む上で注意していることはありますか?

福田さん「勉強会などでよく話に出てくるのは、技術会社はどうしても技術ありきで物事を考えがちだけど、我々は広告会社なのでマーケティング視点でAIを活用することが重要、ってことですね。

技術ベースで考えるのではなく、クライアントさんや世の中の課題を解決する際のソリューションのひとつとしてAIを使うことを大切にしています。

ですので、“それってAIで解決することじゃないよね”という問題に関しては、AIではない別のソリューションを提案することもあるかもしれません。広告で解決する方が良い場合は広告を提案しますし、PR企画の方がいい場合はPR企画を提案します。」

「AIでお願いします」と頼まれて、AIじゃない提案をされるとクライアントさんが驚いたりしませんか?

和泉さん「そうですね。私も実は2014年に電通ロボット推進センターという組織を立ち上げたんですが、そこでもAIと同じようなことが起こりまして・・・。

入り口はやっぱり“ロボットで何かできないか”という頼まれ方になってしまうんですが、実際に話を聞いてみると課題はもっと別にあることが後々わかったきたりもするんですよね。課題を見つけることが重要なので、きっかけがロボットであったとしても、それはそれでいい機会ではあるんですが・・・。

“ロボットなら、AIなら何かできるかも?”という期待値があるからクライアントさんも声をかけてくれると思うので・・・難しいところですね。

ただやはり、AIにしてもロボットにしても、決して魔法ではないので、なんでもできるわけではないんですよね。できることとできないことをご理解いただくことは必要になってきます。」

福田さん「そうですね。だから、がっかりされちゃうことも正直あります。」

和泉さん「もちろんAIにもロボットにも強みはあるので、その強みをどう生かせるか可能性は探ります。でも、そこに捉われすぎずに解決を目指すのが大事なのかなと思います。いろんな解決策を持っていることが電通グループの強みなので。」

福田さん「例えば、画像認識の技術を使うにしても、何を認識して、どの行程を省くためにAIを使うのか、オペレーションはどうするのか、またそれをどうやって価値化するのか、どうやって世の中に広げていくのか、どうやってマネタイズするのかまで考える必要があるわけで。課題の発見からビジネスデザインまでを設計できるのは電通グループならではかもしれません。」

和泉さん「“技術を適切に使うのが大事”という話でいくと、AIコピーライターのAICOがいい例ですよね。これはコピーライターの発想支援ツールとして活用すると力を発揮するんですが、いきなり完成形のコピーを求めてしまうとちょっと上手くいかない。もちろんいきなり完成形が出てくることもありますが。

本来の使い方で言うと、人間が見落としているアプローチを発掘したり、業務効率を上げたりするのに使うべきもので、いきなりフィニッシュワークを求めると“なんか使えないな”と誤解が生じてしまう。AIの特性を生かすも殺すも使い方次第ではあるので、特性を理解した上で使うのがとても大切ですね。」

AIを使う上で、やはりクリエーティブは重要だと思いますか?

福田さん「例えば、少し前にタレントをモデルにしたアンドロイドが話題になったかと思います。アンドロイドそのものはこれまでもあった技術ですが、そこにどういったアイデアを足していくかによってスポンサーがついたり、ビジネスになったりするので、技術にクリエーティビティをプラスする視点は重要ですね。電通の強みを生かせるのも、まさにそこだと思っています。

技術そのものがコモデティ化していても、見せ方によって価値化できることもよくあります。鉛筆やPhotoshopと同じく、AIもあくまでツールなので上手く使えば技術そのものは新しくなくても、これまでにない価値を提供することも可能だと思います」

アドバンストクリエーティブセンターはテクノロジーとクリエーティブの融合を目指すということですが?

和泉さん「はい。アドバンストクリエーティブセンターは、アドテクノロジーやAIとクリエーティブを融合したソリューション提供がミッションのチームです。

アドバンストクリエーティブセンターのアドバンストは、アドバンストチェスが由来になっていまして。アドバンストチェスというのは、人間とAIがタッグを組んでチェスをするアプローチのことです。

AIが導き出した最善の指し手の候補を参考にして、棋士は直観的な能力と創造力を発揮して、人間だけでもAIだけでもできない指し手を探っていくのです。人対AIでは、AIが圧倒的に強いのですが、人とAI双方の強みを組み合わせることで、AIを上回ることも可能だと言えます。

クリエーティブも同じように、技術の特性を理解した人間がテクノロジーとタッグを組むことで、より高いパフォーマンスを発揮できるんじゃないかというのが我々の考えです。

例えば、AIだとこの傾向のアイデアが出てきたけど、ここはあえて人間の発想でアイデアを練るとか、逆に人間にはない発想のものがAIから出てきたら、その方向から精度を高めていくとか、AIに頼りすぎるのではなく、AIを使ってどうクリエーティブを高めていけるかが重要だと考えています。

今年5月には、AI MIRAIの活動の一環として、アドバンストクリエーティブセンターが中心となり、AIを活用したバナーの自動生成システム『ADVANCED CREATIVE MAKER(アドバンストクリエーティブメーカー)』(β版)の発表も行いました。

これも、AIだけで業務を完結させるためのものではなく、業務の効率化や発想支援を想定したツールです。

こういったツールが、よりスピーディーで品質の高いクリエーティブの手助けをできるようになると、時代も変わってくるのかなと思います。」

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・・・と、今回はここまで!

↓ダイジェストで要点をまとめました。

①電通グループにはAIのプロフェッショナルチームがいっぱいある。
②発足の経緯は、社会的なAIやテクノロジーの発展や関心の高まり。
③電通グループのAIプロジェクトの特徴は、技術ありきではなく、マーケティング視点での提案ができること。
④もうひとつは、課題発見から広げ方、ビジネスデザインまで一貫して設計できること。
⑤AIは特性に合わせて使いこなすのが重要。
⑥AIはクリエーティブと掛け合わせることで価値が広がる。
⑦人とAIを掛け合わせたタッグチームは強い。

個人的には③と⑦が特に響きました(他もですけど)。

■③について
新しいことを覚えるとつい試したくなってそれありきで考えてしまいがちだけど、実はこれまでやってたことを使った方が早く解決できるときもある。人生でも良くあることですね。

■⑦について
これまでのコラムでも人とAIの協力関係が重要という話が出ていましたが、やっぱり人ができることには限りがあるし、AIにできることにも限りがある。AI対人間という構図で見るのではなく、いかに上手にAIを使いこなして新しい価値を生むかが重要だなと改めて思いました。

次回はAIのプロフェッショナルが考える、
これからの人材育成やチーム編成に迫ります!

乞うご期待!

読んでいただいてありがとうございました!
また次回も読んでくださいね!

西畠勇氣