コラム
COLUMN
COLUMN
コラム
 | 
2017.4.18
2017.4.18

「beプログラミング2 ~2020年大予測!小学校の授業はこうなる!?~」書籍化決定&ICT教育に関する緊急会談が実現!!

2017年1月22日にBSフジにて放送された「beプログラミング2 ~2020年大予測!小学校の授業はこうなる!?~」がなんとこの度、書籍化するというので、その打合せ現場にお邪魔してきた。

番組内で各教科を担当した講師陣がまた一堂に会した。
番組で授業をした時の想いやプログラミングの面白さなどを盛り込み、再構成されるようだ。小学校教員をメインターゲットとして夏休みまでには、発刊される予定なので、期待をしながら待つこととしたい。
そんな中、既に先に打合せをしていた松田校長、平井氏、福田校長を見つけてしまったので、こんな千載一遇のチャンスはないと思い、緊急3者会談をお願いしてみた

緊急会談~自分の教員人生を振り返りながら、ICTやプログラミング教育について語る~

題して、「~自分の教員人生を振り返りながら、ICTやプログラミング教育について語る~
小金井市立前原小学校校長の松田孝先生、杉並区立天沼小学校校長の福田晴一先生、2017年3月まで古河市教育委員会参事兼指導課長を務められていた平井聡一郎氏、3人とも、今のプログラミング教育における現場のリーダー格的存在だ。

松田:それじゃあ、早速、お二人の教員生活を含めながら、ICT、特にプログラミングに対しての想いをざっくばらんに、聞かせてくださいよ。
平井:ICTの活用もプログラミングも「授業をかえる」ということにつきると思う。今までの授業でも、よくなかったところは当然あるだろう。変わるためのきっかけが必要だった。そこが、授業の中でのICTの活用であり、意識を変えるという意味ではプログラミングはすごい力を持っていると感じた。
松田::私もそれは、大賛成。元々は平井さんは、中学校の技術の先生ですよね?
平井::そうですね。技術・家庭科でプログラミングを教えている中で、子供たちが筋道立てて考えるとか、論理的な思考が感覚的に育っていくんだろうなとわかっていた。ICTをやっていく中で、プログラミングをやっていく中でたどり着くと思った。形のないときからどうやったらいいか考えていた。まさかプログラミングが必修になるとは思っていなかった。
松田::選択履修なのに、プログラミングをやっていたのは理由があったの?
平井::考え方が必要だったからかな、おもしろそうだったし。
松田::なんで、おもしろそうだと思ったの?
平井::自分がやってて楽しかったから。色んな言語をやってみたけど、どこの子達もできるものとなると、限られると思った。自分が校長になったときには、どこかの学校でプログラミングをやりたいと思っていた。

松田:なるほど、すごいですね。
福田先生は小学校なのになぜ、ICTやプログラミングを導入しようと思ったの?
福田:ちょっと今回のテーマからそれるかもしれないけど、今回の学習指導要領は戦後最大の改革だと言われていますよね。学校教育ではないプログラミングを、現に総務省が後押しをしている。日本の教育は文科省だけではないんだ、国を挙げて変えていかないといけないんだよと言うあらわれだと思った。
天沼小には4年いるが、チャレンジスピリッツが強い。考える事が楽しいと思う先生方が多い気がする。
松田:なるほどね、校長の意識が変わらないと学校自体は変わらないよね。プログラミングに関しては、現場との温度差がどうしてもあるから。
平井:時間はかかるけど、じわじわと広がるのを待つしかないと思う。そうやって(プログラミングを取り入れているという)事実ができてくれば、無視することはできないからね。
プログラミングをやっているモデル校は、親も興味を示している傾向がある。
松田:親が(意識が)変わっていくのがすごい。親はどちらかといったら変化を嫌うし、ICTやITというデジタルは冷たいから、教育にそぐわないので、もっとあったかみのあるものをやってほしいと言いますよね?
平井:それは、子供の変化を慌てずじっくり見て、親も納得していったよ。
松田:福田先生のところはどうなの?新しい事にチャレンジする方向だろうけど、親とか杉並区の校長会とかの(プログラミングに対する)反応は?
福田:杉並区の教育長はカリスマ性がある。インフラも積極的に揃える人。10年先の子供の教育のために、これだけインフラを整えているのに、(プログラミングを)やらないのは罪作りな教員だ、とまで言っている。
区を挙げてICTのトレンドができているのがすごいと感じる。
松田:ICTの反響はわかったが、その中でプログラミングというのはどう?
福田:それは、まだまだ。でも、タブレット40台とノートPCが40台あるので、高学年は何らかの授業でプログラミングをやることにしている。
松田:それはすごい。前原小は来年、総合的な学習の時間で、3、4、5、6年は(それぞれ)35時間(プログラミング)やりますよ。教科含めて100時間のプログラミングを取り入れた授業実践をやれば、革命がおきると思っているから。
やっぱり、授業をプログラミングで変えたい。私は社会科教育が専門だった。色々授業改善もやったけど、振り返ってみると、結果あまりうまくいってなかったように思える。でも今はプログラミングをやると子供の集中や興味関心が一発でそっちに向く。これを活用して、プログラミングでの「学び」を既存教科に活かせればいいと思ったけど、そう簡単に従来教科は変わらない。
それは、教科教育のこれまで戦後やってきた完結性と完成度が高いからなんだと思う。まだまだプログラミングはどちらかというと、芸術系の図工とか美術、音楽に近い感覚が現場の教員にはあると思う。私は、何とかしてプログラミングを授業に取り入れようと思って、「総合的な学習時間」のテーマをつくった。「3年生はコンピュータって何?」「4年生はアルゴリズムって何?」「5年生は、IOTって何?」「6年生はロボット(AI)って何?」ってね。
このテーマの元で35時間やりながら、そこでの「学び」を教科に活かしたいと思っている。だって、Viscuitで漢字の書き順とか教えられるじゃないですか。LEGOのマインドストームEV3やマイクラで算数ができるでしょ。これで、100時間なんてできたら革命が起きるよ、きっと。今はまだ端末を集めないといけないから、いつから正式に始められるかわかんないけどね(笑)
応援してくれる人もいるけど、反発する人もたくさんいる。ICTだけじゃなくて、私が赴任して早々、色んなことをドラスティックに変えていくので、それに対する反発ももちろんある。でも、市長は応援してくれているんだよね。全国に(このような取り組みを)やりたい校長はたくさんいると思う。そういう人たちの思いを受けて、点を線につなぎたい。理屈は簡単だけど、現実は大変だと思う。

平井:そうだね。でも、あと3年しかない。この1年でどこまでやれるか?広がるのを待つしかないね。
松田:広がっていくときには、先に取り組んでいたんだから、それないの成果を見せたいな。うちはこれだけ頑張ってたんだよという成果を出して、周りの危機感をあおって、やっぱり(プログラミング教育を)やったら子供がのびた、先生が変わった、っていう現実を見せたいね。
今、小学校でも学級崩壊があるよね。その大きな原因は、一つは授業がつまんないことなんじゃないかな。でもプログラミングとかやると、新しい最新のテクノロジーを学校で学ぶことができる。子供は、若い先生でも相当リスペクトしますよね(笑)
福田:うちの先生たちも、アンプラグドを触って、みんなワクワクドキドキしてるよ。
今までこんな感覚なかった、楽しい!とは思っているみたいだけど、それをすぐに「授業」という枠にはめるのは難しいのかもしれないね。
松田:プログラミングは、従来授業のフレームで、考えてはいけないのかも。
福田:私は今度、PTAで(プログラミング体験を)やってみようと思っているよ。
松田:保護者に体験させるのはアリですね。でも、保護者は、「ゲーミフィケーション」というと学校でゲームやらせていいのか?ってなりますよね?(笑)
福田:なので、体感させちゃった方が早いかなと(笑)

松田:なるほど、それはいい考え。
だから、私は強く言いたいんだけど、学校は「勉強する」ところではなく、「学ぶ」場なんだということ。勉強という言葉には気の進まないことを仕方なくするという意味がある。勉強という言葉を使わないで学校の「学び」を語る。私は努めて「学び」「学び」と言っている(笑)。
学校は勉強するところじゃないよね?「学ぶ」ところだよね?って。みんな「学び」を楽しんじゃいけないと思っているんだよね。
平井:学校で勉強することはつらい事だと思っている。考える事は楽しい事だと思わないといけない。
松田:その感覚がないとアクティブラーニングもできないよね。
平井:必死にプログラミングをやったら、1時間あっという間にすぎて、疲れた~となる事が大事。
松田:その体験は絶対大事ですよね。自転車の乗り方を学ぶ時に、言われたことを頭で理解させるだけじゃなく、実際、乗ってそれを体感して、初めて納得できるものだもんね。
だからアクティブラーニングも同じ。こういうことが本来の「学び」で、それが自分たちの成長につながるというのがわかればいいな~と思う。
平井:先生も子供たちもきっと、(その感覚を)実感できれば変わるだろう。
松田:今のやり方でアクティブラーニングやるとアクティブティーチングになる。
それともう一つ、教員ができないからといって民間企業が学校に入ってくる。
民間(企業)の人たちの授業感は、みんなティーチング。やっぱり授業はプロである我々、教員でしかできないもの。
その子供のバックグラウンドを理解して、人間関係を把握しているのは担任だからね。
平井:ホントそうだね。
もっとこれから、先生たちがプログラミングのよさを実感してほしい。
松田:そしてこれが子供が楽しく成長させるいいツールであり、コンテンツなんだと思った時に、一緒に学べばいいんだよね。子供と一緒に学ぶ場を開けばいいんだよ。それができるのは教員しかいないんだから。
平井:そのためには、先生がプログラミングを楽しいと思ってくれるような仕掛けをドンドンこれから考えていきたいと思ってるよ。
プログラミング「を」学ぶのではなく、プログラミング「で」学ぶという意識改革が必要なんだからね。

30分弱でしたが、内容が濃すぎて時間が経つのがあっという間でした(驚)これだけアツい想いを持った方々がいらっしゃれば、プログラミング教育の未来も明るい!と思わざるを得ないセッション、ありがとうございました。

写真左:平井聡一郎さん、中:松田孝先生、右:福田晴一先生
詳細プロフィールは下記参照

<平井 聡一郎>(ひらい そういちろう)
茨城大学教育学部卒 茨城県の公立小中学校教諭を経て、総和町教育委員会指導主事、茨城県教育委員会指導主事を歴任後、下館南中学校教頭、古河第五小学校校長、古河市教育委員会参事兼指導課長、2017年4月より情報通信総合研究所特別研究員。昨年度まで、古河市教育委員会参事兼指導課長として。古河市におけるICT機器を活用した授業改革に取り組んできた。特に全国初となるセルラーモデルのiPadとクラウドプラットホームの活用、ICT活用推進リーダー育成のための教育ICTエバンジェリスト制度の構築、小学校からのプログラミング指導での取り組みは全国的に注目されてきた。また、文部科学省「ICTを活用した教育推進自治体応援事業」ICT活用教育アドバイザー及び企画評価委員、2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会基本問題ワーキンググループ委員、総務省プログラミング教育事業推進会議委員を歴任している。現在、2020年の次期学習指導要領完全実施に向け、地方からの教育改革を目指し、ICT機器整備のコンサルティング、教員のためのプログラミングセミナーの開催等に取り組んでいる。
<松田 孝>(まつだ たかし)
東京学芸大学教育学部卒、上越教育大学大学院修士課程修了、東京都公立小学校教諭、指導主事、主任指導主事(指導室長)を経て、多摩市立東愛宕小学校(現、愛和小学校)に赴任、2016年4月からは小金井市立前原小学校校長。2016年度、総務省「プログラミング教育事業推進会議」委員、「地域IoT実装推進タスクフォース人材・リテラシー分科会」委員も務める。「子どもたちは、毎日ランドセルを背負って過去にタイムスリップしている」「従来授業はクソゲーだ!」という相当の危機意識をもって、情報端末の積極的活用で、100年以上変わらない初等公教育のリデザインを実践する。2016年度は3年生以上の学年で、総合的な学習の時間に年間20時間のプログラミング授業計画を立案して実践。2017年度は総合的な学習の時間で探究的テーマを設定し、3年生以上は35時間のプログラミング授業を実践する。第4次産業革命に真に対応できる授業実践革命を現場の事実として示すべく奮闘中! 2017年11月25日土曜日、授業(学校)公開予定。 前原小は2018年度、総務省の「先導的教育システム実証事業」協力校(フルクラウドモデル)、「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業協力校。
<福田 晴一>(ふくだ はるかず)
東京学芸大学教育学部特殊教育学科(言語障害児教育)卒業後、東京都公立小学校勤務。知的障害特別支援学校教頭、在外教育施設・米国フィラデルフィア補習授業校校長、公立小学校教頭の後、教育改革に取り組んでいた杉並区立和田中学校に隣接する和田小学校校長として、民間校長と六年間のタッグを組む。その後、杉並区初の統合新校、天沼小学校長として現在に至る。天沼小学校においては、学校運営協議会、学校地域支援本部をはじめ、キャリア教育等において、文部科学大臣表彰を受け、次世代をイメージするモデル的な学校経営を推進。杉並区の教育施策「ICT活用と情報教育」の中核をなし、4年生以上が一人一台タブレットの環境で教育活動を進めている。

こどものミライ