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2018.11.23
2018.11.23

「こどものミライ」と大田区、狭山市のICTクラブがいよいよスタート

「こどものミライ」が東京都大田区と埼玉県狭山市と行っているICTクラブ「こどものミライクラブ」が11月より始まりました。

大田区で開催された「こどものミライクラブ」

「こどものミライクラブ」は、総務省が推進する「地域におけるIoTの学び推進事業」において、モノづくりが盛んな大田区と狭山市と連携し、プログラミングを活用して地域課題の発見と解決に取り組んでいくものです。初年度は、こどものミライと各自治体の教育委員会や学校などが協力し、地域に根ざしたICTクラブの構築を行っていきます。

大田区と狭山市の小学校でそれぞれ参加者を募集し、計30名の小学生が自分たちの街の課題を考え、プログラミングを活用しながら解決方法を探っていきます。期間は2018年11月から2019年2月までの4か月。月に1~2回集まり、みんなで話し合ったり、プログラミングを学んだり、地元の工場を見学したりしながら、課題解決に取り組んでいきます。

「こどものミライクラブ」大田区のスケジュール。2019年2月には、大田区と狭山市のクラブ員が集い、合同で発表を行います。

大田区の小学生10人がPythonに挑戦!

今回は、大田区で開催された「こどものミライクラブ」の1回目を取材しました。参加者は、大田区立北糀谷小学校とおなづか小学校の3年生から6年生の10人。二校は、平成30、31年度の東京都プログラミング教育推進校に認定されており、すでに授業のなかでプログラミング教育を取り入れています。といっても、参加した子ども達の趣味は剣道や水泳、フィギュアスケート、ピアノと、みんなバラバラ。キーボードの打ち方も、まだまだおぼつかない様子です。

片手の指でキーボードを打つ参加者の小学生達。

そんな普通の小学生達が挑戦するのは、なんとPython! Python(パイソン)とは、現在人気のあるプログラミング言語で、スマホアプリやAIなどの開発にも使用されています。子ども向けの教材として開発されたブロックプログラミングと異なり、プロが使う本格的なプログラミング言語です。

講師を務めるのは、早稲田大学基幹理工学部講師で、プログラミング言語の教育を研究している齋藤大輔先生です。

子ども向けのワークショップなども手掛けている齋藤大輔先生。

「こどものミライクラブ」1回目は、以下のような流れで行われました。
1.「こどものミライクラブ」スケジュールと主旨の説明
2. 参加者による自己紹介
3. 使用機材「Raspberry Pi」の説明
4. Pythonの解説、実践

大田区にある東京都立六郷工科高校の生徒や、小学校の保護者も、サポーターとして参加していました。

自分の街の課題について考えてみる

まずは、「こどものミライクラブ」の概要が説明され、その後、ICTやIoTといった用語について、齋藤先生がひとつひとつ解説していきます。

ICTやIoTについても、具体例を出しながら丁寧に解説してくれました。

斎藤先生からは、あらゆるものがコンピュータやネットに繋がり始めた今、「コンピュータに使われる人」でなく、使いこなすにはどうしたらよいのかという問いが投げられました。
そのひとつの答が、「コンピュータと仲良くなること」です。そして、プログラミング言語とは、コンピュータと会話する言葉だと解説しました。

次に、今回のクラブの目的でもある街の課題について考えていきます。まず、グループにわかれて、自分達の住んでいる大田区にどんな問題があるか、困っていること、気になることはないかを話し合いました。

そこで出てきた問題は、カラスがゴミを漁ってしまうこと、川が汚いことなどです。これらの課題をどのように解決すればよいのかという方法について、今回はコンピュータとプログラミングを使って考えていきます。

話し合いで挙がった大田区の問題点。なかには、あまり街の問題と関係ない、「先生の機嫌がわかるといい」という小学生ならではの問題もあがりました。

いよいよプログラミング! コマンドのタイピングに苦戦

街の問題が見えてきたところで、パソコンを使ってのプログラミングに挑戦します。今回のクラブで使われるパソコンは「Raspberry Pi」というマイコン。小型で安価ながら拡張性が高く、教育用の機材として活用されています。

「Raspberry Pi」。むき出しの小さな基板にキーボード、マウス、モニターが接続されています。

パソコンを起動したら、いよいよPythonに挑戦です。クラブでは「IDLE」という開発環境を使用しました。Pythonには「対話モード」というものがあり、自分が書いたプログラムを同じ画面内ですぐ確認することができます。

最初に行ったのは、「print()」という命令を使って、画面に文字を表示させる方法です。参加者の子ども達は、配布されたテキストとにらめっこをしながら、一文字ずつ丁寧に打っていきます。そして、全員が「Hello Python」という文字を表示させることができました。

Pythonのコマンドを打つ、子ども達のパソコン画面。

こうして、小学生たちのPythonの挑戦が始まりました。
次に学んだのは「計算式」で、足し算や引き算、掛け算、割り算などを計算するプログラムを書きました。さらに、プログラミングにおいては、重要な役割を果たす「変数」についても学びます。

一行のプログラムから始まり、計算式や変数ではプログラムはどんどん長くなっていきます。右手の指一本でキーボードを打つ小学生もいましたが、それぞれが苦労しながらも根気よくコマンドを打ち込んでいきます。わずか10行ほどのコマンドでも、小学生達にとっては大変な作業だったようです。

真剣な表情でキーボードを打つ小学生達。

Python製のゲームを見てモチベーションアップ!

子ども達の集中力がだんだん切れてきた頃を見計らい、Pythonを使った作品例が紹介されました。
スクリーンに映し出されたマインクラフトの画面を見て、「あ、マイクラだ!」と、テンションが上がり出す子ども達。タイピングの疲れも忘れて、楽しそうに画面を見入っています。

「おなじみのマイクラでも、Pythonを覚えるとこんなこともできます!」
と、齋藤先生が見せてくれたのは、マイクラのマップに造られた巨大な立体時計でした。さらに、Pythonでプログラムしたというオリジナルゲームも披露。自分達が学んでいるプログラミング言語の例を見せてもらい、やる気もアップしたようです。

最後に、今後クラブで使う予定のセンサーなどが紹介されました。
「たとえば、土壌湿度センサーを使えば、最初に出た課題のひとつ、川の汚染度などを測ることも可能です」という話を聞いた小学生達は、小さな部品を手に取って、ひとつひとつ興味深そうに眺めていました。

Raspberry Piには、土壌湿度センサーをはじめ、用途にあわせた様々なモジュールが用意されています。

こうして2時間半にわたる、こどものミライクラブの1回目は無事終了しました。参加者の子ども達に今日の感想を聞いてみたところ、「難しいけれど、面白い!」という声が多く、未知の体験に挑戦する楽しさを感じていたようです。

大変だからこそ、プログラムが思った通りに動いた時の喜びも大きいと感じた小学生達。

2時間前はPythonを全く知らなかった子ども達が、自力でPythonのプログラミングを書き、課題解決に向かって進み始めました。全体から見れば、まだまだ小さい一歩かもしれませんが、この一歩はとても意味のあるものだと思っています。

2019年2月の発表会では、大田区と狭山市が合同で、それぞれの成果を発表しあいます。この1歩がどんな結果につながっていくのか、3か月後を楽しみにしたいと思います。「こどものミライ」では、引き続きクラブの様子をご紹介していきます。

相川いずみ