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2019.3.7
2019.3.7

短期連載 第2回:『ルビィの冒険』作者のリンダ・リウカスさん来日記念 教育カンファレンスレポート

2018年12月、プログラミング絵本『ルビィのぼうけん』の作者であるリンダ・リウカスさんが来日し、各地で来日記念イベントが開催されました。

『ルビィのぼうけん』の作者、リンダ・リウカスさん。

この短期連載では、『ルビィのぼうけん』を使った親子向けのワークショップ、教員カンファレンス、さらにはリンダ・リウカスさんへのインタビュー記事などを紹介していきます。

第2回は、12月16日に東京銀座のD2Cホールで開催された「教員向けカンファレンス」の様子をお届けします。実際に『ルビィのぼうけん』を用いて、アンプラグド・プログラミングの授業を小学校で実践している先生方が集い、工夫を凝らした授業実例の紹介と、リンダさんを交えたパネルディスカッションが行われました。

カンファレンス冒頭であいさつをする『こどものミライ』編集部の田村真理子。

リンダさんが描いた『ルビィのぼうけん』は多くの言語に翻訳され、世界中で親しまれています。

第1回でご紹介したように、『ルビィのぼうけん』は好奇心旺盛な女の子ルビィとともにコンピュータやインターネットの仕組み、プログラミングなどを学んでいくことができる絵本です。コンピュータを用いない「アンプラグド・プログラミング」教材として注目されており、日本でもすでに授業に取り入れている学校もあります。

今回の教員カンファレンスでは、プログラミング授業を実践している東京の小学校の先生方が登壇し、それぞれの授業の様子や学びの狙いについて語ってくれました。

先進的な取り組みを行う小学校3校が授業実例を紹介

各校ともプログラミング教育に意欲的に取り組んでおり、様々な実例が紹介されました。ここでは『ルビィのぼうけん』をはじめとしたアンプラグド・プログラミングの実例を中心に、紹介していきます。

東京都北区立西ヶ原小学校(プログラミング教育 実施1年目)

最初に登壇したのは、平成30年度から東京都教育委員会のプログラミング教育推進校に指定された北区立西ケ原小学校です。

プログラミング教育は1年目ということで、まずは「北区内の他の小学校でも実施できるプログラミング教育の指導事例を作ること」を目標とし、実践については、学習指導要領の「プログラミング教育の手引き」例示から選んで実施することを心がけたそうです。また、概要から実技まで、教員研修を数回にわたって行いました。

今年度は、3、4、6年生でそれぞれ授業研究を行い、3年生の授業で『ルビィのぼうけん』が使われました。

3年生児童への導入として『ルビィのぼうけん』を先生が読み聞かせをしています。

児童は、『ルビィのぼうけん』の「アルゴリズムとシーケンス」の地図シートを使い、スタートからゴールまで辿り着く「めいれい」を自分で考えました。さらにグループワークで話し合い、発表を行いました。この授業を通じて、「コンピュータでは、正しい命令や順番が必要だ」ということに気付いたといいます。

また、身近な題材である「給食当番」をテーマにし、当番の仕事を細かく分解し再度構築することで、「よりよい生活を送るためのプログラミング的思考を育む」ことを目標にしたということです。

1年間の研究によって、プログラミング体験に必要な時間や感覚がつかめ、必要な技能を理解できたことなどを成果として挙げつつ、一方で課題も感じられたといいます。そのひとつが、「従来の単元時数内でプログラミング体験を実施するための指導計画」です。どの学校においても、いかにプログラミング教育のための時間を捻出するかという点は、頭を悩ませている問題です。

東京都立川市立上砂川小学校(プログラミング教育 実施2年目)

次に発表を行ったのは、立川市立上砂川小学校です。平成29年度から東京都教育委員会の情報教育推進校に指定されており、約2年にわたってプログラミング教育への取り組みを行ってきました。

同校では、校内に各学年と専科教員が参加する「校内研究部」を発足し、授業力と児童の学力向上に努めてきたとのこと。さらに、横の連携として、研究部の枠を超えて有志による「プログラミング教育勉強会」を開催した他、立川市におけるプログラミング指導教員の養成塾をみんなのコードと連携して行うなど、積極的な活動をしています。

上砂川小では、1年生から『ルビィのぼうけん』を使ったプログラミングに取り組んでいます。1年生向けには、ワークショップでも人気の「ダンス・ダンス・ダンス」を使いました。児童は、ダンスでルールやループを確認し、自分のダンスを考えたり、友達のダンスを楽しんだりしたそうです。

上砂川小学校の先生が、1年生の考えたダンスプログラムを実践。

体験した児童達からは、「むずかしいけれど、おもしろかった」「またやりたい」といった感想が寄せられたとのこと。「難しくても間違えても面白い」といった感想を抱かせるのは、プログラミングならではのものだと語っていました。
とても熱心で、熱意溢れる先生が多い印象を受けた砂川小学校。特に、情報共有の手間を惜しまず、学校内だけでなく地域に広げていく姿勢は、前例のないこれからの教育で必要な要素だと感じさせる発表でした。

東京都荒川区立第二日暮里小学校(プログラミング教育 実施3年目)

最後に登壇したのは、荒川区立の第二日暮里小学校です。荒川区は、東京都の中でも、いち早くICT環境の整備に努めており、第二日暮里小では平成25年度から先行導入校として、タブレットPCが1人一台貸与されています。

平成25年には、すでに1人1台の環境が実現していました。

そのため実践例も多く、平成28年度には、3年生の総合の時間で「LEGOロボットを活用した授業公開」を行うなど、今回発表した小学校のなかではもっとも先進的な取り組みをしています。

『ルビィのぼうけん』は、3年生から6年生の総合的な学習の時間で使われています。たとえば、6年生の「未来ロボット開発会社」という単元では、最初と最後にアンプラグドの学習を配置し、最初の「プログラムって何だろう」という導入で『ルビィのぼうけん』を活用した授業を行っています。

学校内の環境についても、児童がプログラミングに興味をもち、かつ手軽に体験できるように、図書室にプログラミング関連図書を置き、Scratchの体験や、教育版レゴ マインドストームEV3を休み時間や放課後の時間などに作ることができる工夫も凝らしているとのこと。

ICT環境の整備では、公立の小学校として全国でもトップクラスといえる第二日暮里小学校ですが、ここに行きつくまでには先生方の試行錯誤と、実践があったことが感じられる発表でした。

教育現場からの生の声が届くパネルディスカッション

3校の授業実例の発表後は、リンダさんを迎えてのパネルディスカッションが行われました。ここでは、「プログラミング教育を実践してよかったこと」「児童の変化」「アンプラグドの位置づけ」といったテーマについて、それぞれの学校の先生が自らの実践体験をふまえての意見を披露しました。

「プログラミング思考教育を実践してみてよかったこと、難しかったこと」という質問に対し、よかった点として、「新しいことなので、様々な視点からみんなで考えられたこと」、「絵本があることで、子ども達が楽しみにしてくれて、楽しみながらプログラミング的思考を学ぶことができた」「子ども自身が、プログラミングを意識して家電製品に目を向けるようになった」「調査で、小学校からプログラミング教育にふれていることで、より主体的にICTを活用し、学習に活かせることが分かった」といったエピソードがあがりました。

一方で、「先行実例がない」「教科のねらいにあった活動なのか、プログラミングの必然性あるのか」といった、指導案を構成していく上での迷いも多く寄せられました。また、「国の政策と同時進行で、学校では自分たちのできること探っていかなければいけない」という、現場ならではの苦労もあるようです。

また、「アンプラグドの位置づけ」についても、興味深いエピソードが披露されました。

「6年生の体育のマット運動で、グループで組み合わせを考えて団体種目を作り上げる試みをやってみた。プログラミングを入れることによって、プラスアルファで授業が伸びるということではなく、こりように『授業を達成するためにプログラミングの考え方を使って子どもたちが考える』ということがよいと感じた」といった意見が出る一方、「アンプラグドの先にはコンピュータがある。あくまでコンピュータサイエンスの導入の一環として位置づけだと思う。どうやって、アンプラグドからコンピュータにつなげていくのか、子ども達にイメージさせたいと思う」といった話も出ました。

また、日常からプログラミングに触れられるよう、図書室にプログラミングコーナーを作っている学校も複数ありました。

図書室に設置されたプログラミング図書のコーナー。

たとえば、第二日暮里小学校では、『ルビィのぼうけん』をはじめとした展示コーナーとあわせて、自由にブログラミングを体験できるコーナーも用意されています。
また、上砂川小学校でも、『ルビィのぼうけん』や副読本を図書室に置いたところ、昨年の貸し出しランキングで、人気の本に混ざってなんと6位になったとのこと。「子ども達の目にふれるところに置いておくことも大事だ」と、同校の青木先生は語っています。

リンダさんから先生に向けてのアドバイス

最後に、先生方からリンダさんへの質問が様々な質問が投げかけられました。

質問に笑顔で答えるリンダさん。

「ルビィ自体は学校用に作ったわけではなく、家庭で親子が読むように書いたものですが、先生が『いいな』と思って学校に使ってもらえるのは良かったです。でも、元々学校用ではないので、『こういう風にするとよい』という意見があればぜひ教えてほしい」とリンダさん。

さらに、「実際に、学校で使った例はアメリカやオランダ、韓国などでありますが、クラスの子ども達の状況をいちばんわかっているのは、現場の先生です。海外の実例をそのまま持ってくるよりも、クラスの状況を見て使ってみるのが良いと思います。
コンピュータサイエンスは難しいけど、今日発表されたような形にかえて教えられる力を皆さんは持っています。2020年まで十分に色々なことをやるチャンスがあると思います」とアドバイスを行いました。

こうして、2時間半にもおよぶカンファレンスは終了しました。今回発表を行った小学校は、実施1年目から3年目まで期間が異なっていたことから、それぞれの取り組みの推移も感じられる興味深い発表になりました。
今、学校現場では、前例のない新しい時代の教育を、手探りで一歩ずつ進めています。『ルビィのぼうけん』をはじめとした教材が、その手助けやきっかけになっていることを、改めて感じました。

次回の第三回では、リンダさんへのインタビューを掲載いたします。プログラミング教育から、リンダさん自身のこと、パラレルキャリアまでの幅広い質問に、丁寧に答えてくれました。こちらも必見です! お楽しみに。

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