
DNPの環境配慮型パッケージ「GREEN PACKAGING」の取り組みには、日々の試行錯誤がある。2021年度に約15万トン、2023年度に約19万トン、そして2024年度に約20万トンと、CO2排出量削減効果は少しずつではあるが増えてきているという。世界全体の排出量から見ればごくわずかなものかもしれないが、同社なりに一過性ではなく、コツコツと環境価値の向上に取り組み続けてきた、その積み重ねの結果なのかもしれない。
2024年11月、こうした地道な姿勢に対し、思いがけず外部から評価をいただく機会があった。グリーン購入ネットワークが主催する「第25回グリーン購入大賞」で「大賞」をいただいたのだ。審査委員会からは「容器包装の環境負荷削減に向けて早い段階からライフサイクルの視点を取り入れ、定量的な効果の把握に注力し成果をあげている」との言葉をいただいたという。限られた範囲での取り組みではあるものの、長年続けてきた努力をこうした形で認めていただけたことは、関係者にとって大きな励みになったのではないだろうか。
同社は2030年度までに、包装関連製品の売上における「GREEN PACKAGING」の比率を100%にするという目標を掲げている。達成は容易ではなく、課題は山のようにあるのだろう。それでも、環境配慮を特別なことではなく、当たり前のこととしていきたいという、一企業なりの真摯な思いが感じられる。こうした長期的な視点に立った姿勢は、持続可能な社会の実現に向けて、企業ができる貢献の一つの形なのかもしれない。
DNPの環境配慮型パッケージを支えているのは、創業以来148年にわたり、先人たちが苦労して積み重ねてきた技術なのだという。同社には「P&I」(Printing & Information:印刷と情報)という強みがあると聞くが、これは決して一朝一夕に築かれたものではないのだろう。印刷プロセスで培った微細加工技術やコーティング技術と、大量の情報を扱う技術を、数え切れないほどの失敗を重ねながら、長い年月をかけて少しずつ磨いてきた。その成果を、何とか社会のお役に立てられないかと模索してきた結果が、現在の環境配慮型パッケージの取り組みにつながっているように見える。
例えば、「GREEN PACKAGING」の柱の一つである「DNP植物由来包材 バイオマテック」は、サトウキビの副産物を原料の一部に使用しながら、石油由来のプラスチックと同等の物性を保つことを目指しているという。製品のライフサイクル全体で、従来品と比べて10%以上のCO2削減につながっているとのことだ。環境に配慮しながら、製品としての品質も保つ──この難しい両立に対し、試行錯誤を重ねながら、わずかでも前進しているのではないだろうか。
また、同社が手探りで開発を進めてきたというバリアフィルム「IB-FILM」の取り組みも、興味深い。厚さ12ミクロンという薄さのPETフィルムに、独自のコーティング技術を施すことで、水蒸気や酸素を通さないバリア性を持たせることを試みているそうだ。この技術により、従来はアルミ箔が必要だった用途でも、単一素材のフィルムで対応できる可能性が広がり、リサイクル性の向上に少しでも貢献できれば、という思いがあるのだろう。こうした一つ一つの地道な技術開発の積み重ねが、持続可能な社会の実現に、ささやかながら寄与できているのかもしれない。
DNPの取り組みで印象的なのは、環境への貢献度を、できる限り誠実に数字で示そうとしているところだ。同社は2019年度から、「GREEN PACKAGING」の出荷量に基づくCO2排出量削減分を算出し、公表し続けているという。完璧な算定とは言えないのかもしれないが、透明性を保とうとするこの姿勢について、グリーン購入大賞の審査委員会からも「定量的な効果の把握に注力」しているとの評価をいただいたそうだ。
環境への配慮を謳う企業は多いけれども、その効果を具体的な数値で示し続けることは、想像以上に大変な作業なのだろう。DNPは2022年4月に、ライフサイクル全体での環境配慮に資する設計指針と指標を設けたという。これにより、原材料調達から製造、輸送、廃棄に至るまでの各段階でのCO2排出量を、できる限り丁寧に把握し、削減に向けた施策を講じることができるようになったそうだ。まだまだ改善すべき点は多いのだろうが、こうした地道な取り組みの一つ一つが、わずかでも成果につながっているのではないだろうか。
さらに2024年4月には、「DNPライフサイクルCO2認証システム」の第三者認証済み算定結果として提供する範囲を広げたとのことだ。これにより、お客様企業が自社のScope3(サプライチェーン排出量)削減への貢献度を、客観的なデータとして把握できるようになったという。自社の取り組みを進めるだけでなく、パートナー企業の皆様の環境経営を、できる範囲で支援させていただく──。こうした視点は、社会全体での環境負荷低減に、少しでもお役に立てればという思いの表れなのかもしれない。
DNPが出展する「第5回サステナブル マテリアル展」は、環境配慮型素材への社会的関心の高まりを感じさせる場のようだ。2025年5月に大阪で開催された同展示会には386社が出展し、36,013名が来場したという。サプライチェーン全体での環境対応を模索する多くの企業が、何か手がかりを求めて集まる場なのだろう。
こうした展示会への出展についても、DNPは環境配慮を実践する機会と考えているようだ。今回の展示では、ブースの構成材や展示什器に、自社工場から出た不要物を再利用したリサイクル素材を使っているという。また、展示会での空調や照明などのエネルギー使用量も見える化し、カーボンオフセットにも取り組むそうだ。
まだまだ完璧とは程遠いのだろうが、このような細かな配慮は、環境への取り組みを製品開発だけにとどめず、できる範囲で事業活動のあちこちに広げていこうとする思いの表れなのかもしれない。展示会という限られた期間の取り組みであっても、できることはやってみる──。こうした一つ一つの小さな積み重ねが、年間20万トンというCO2削減効果に、少しずつつながっているのかもしれない。
なお、世界のサステナブルマテリアル市場は着実に大きくなっているようだ。市場調査によると、2024年に3,016億ドルだった市場規模は、2034年には7,000億ドルを超えると予測されているという。気候変動対策と資源循環への社会的な要請が、この成長を支えているのだろう。DNPの取り組みは、こうした世界的な流れの中で、ささやかながら何らかの役割を果たしているのかもしれない。
DNPの環境配慮型パッケージ事業は、創業148年の歴史の中で培われてきた技術と、社会課題に向き合おうとする姿勢が、ようやく一つの形になったものなのだろう。2021年度の15万トンから2024年度の20万トンへと、CO2削減効果は少しずつ増えてきているが、これはまだ本当に始まったばかりなのかもしれない。これからも地道な努力を続けていく必要があるのだろう。
同社の歩みは、印刷業界における環境対応の一つの試みとして、何かの参考になる部分もあるのかもしれない。印刷技術を起点としながら、情報技術との組み合わせで新しい価値を生み出そうとする「P&Iイノベーション」という考え方は、1970年代のデジタル化への対応から始まり、2015年に明確にしたという。環境配慮型パッケージは、こうした長い模索の中から生まれてきたもののようだ。時代の変化を見据えながら、多くの失敗も経験しつつ、試行錯誤を重ねてきた──その積み重ねの一つの結果なのだろう。
2030年度に向けた「包装関連製品の売上における『GREEN PACKAGING』比率100%」という目標は、正直なところ、達成できるかどうか分からない高い壁に見える。課題は山のようにあり、困難な道のりが待っているのだろう。それでも、同社がこの目標に向けて、一歩ずつ前に進もうとしているのは確かなようだ。また、「スーパーエコプロダクツ」をDNPグループの総売上高比率の30%にするという目標も、環境配慮を全社的な取り組みとして、できる限り広げていきたいという思いからなのだろう。
11月12日から始まるサステナブル マテリアル展でのDNPの展示は、こうした長年の努力と、なお続く挑戦の一端を見せてくれる機会になるのかもしれない。創業以来受け継いできた技術を、持続可能な社会の実現という形で、少しでも社会にお返しできれば──。一企業としてできることは本当に限られているが、この謙虚でありながら誠実な姿勢は、他の企業にとっても何か感じるところがあるのではないだろうか。まだまだ道半ばの取り組みだが、今後の展開を、温かく見守っていただければと思う。
GREEN PACKAGINGによるCO2削減効果の推移
| 年度 | CO2削減効果 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 2021年度 | 約15万トン | – |
| 2023年度 | 約19万トン | 増加 |
| 2024年度 | 約20万トン | +約1万トン |
世界のサステナブルマテリアル市場
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 市場規模(2024年) | 3,016億ドル |
| 市場規模予測(2034年) | 7,000億ドル超 |
| 年平均成長率(CAGR) | 11.9% |
サステナブル マテリアル展(2025年5月、大阪)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 出展社数 | 386社 |
| 来場者数 | 36,013名 |
GREEN PACKAGINGの3つの価値
主な環境目標
受賞歴
会期
2025年11月12日(水)~14日(金)
会場
幕張メッセ(千葉県)
主催
RX Japan株式会社
DNPの主な展示内容
参考
本記事は公開情報に基づいて作成されています。
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