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2025.11.4
2025.11.4

星野リゾート「2nd Room」がグッドデザイン賞受賞 ホテルロビーを「第2の部屋」に再定義

2024年6月に千葉県浦安市に開業した「1955 東京ベイ by 星野リゾート」のパブリックスペース「2nd Room」が、2025年度グッドデザイン賞を受賞した。審査委員会は「ホスピタリティにおける公共スペースの従来の概念からの大胆な脱却」と評価。ホテルロビーを単なる通過点ではなく、宿泊者が24時間自由に過ごせる「第2の部屋」として再定義したデザインが、テーマパーク利用者の新しい滞在体験を実現している。


何が起きたか

星野リゾートが運営する「1955 東京ベイ」は、東京ディズニーリゾートへのアクセスを想定したテーマパーク向けホテルだ。638室を擁する大規模施設で、1955年頃のアメリカの世界観をモチーフにデザインされている。

今回グッドデザイン賞を受賞した「2nd Room」は、宿泊者がプリチェックイン後(午前5時)からチェックアウト後(午後3時)まで、最大10時間利用できるパブリックスペースだ。ミッドセンチュリーデザインの家具が配置されたオープンスペース、靴を脱いでくつろげるリラックススペース、カーテンで仕切れる半個室スペース、さらにすべり台やビンテージの木馬があるキッズスペースなど、多様な過ごし方に対応する。

開業から約1年後の2025年6月には、利用者からの需要に応じて拡張。人気の高いカーテン付き半個室を増設した。


なぜ重要か

従来のホテルロビーの限界

一般的なホテルのロビーは、チェックイン・チェックアウトの手続きをする「通過点」として機能してきた。長時間滞在することは想定されておらず、特にグループ旅行では課題が顕在化していた。

株式会社乃村工藝社のデザイナーで、「2nd Room」の企画・設計を担当した岡田愛裕美氏は、自身の経験からこう語る。「グループで宿泊すると、誰かが先に寝たいとか、1人で休みたいという方が必ずいらっしゃるのです」

テーマパーク利用者特有のニーズ

東京ディズニーリゾートのようなテーマパークを訪れる旅行者は、早朝から夜遅くまで施設を利用することが多い。しかし従来のホテルでは、深夜に帰館した後や早朝に出発する前に、グループで過ごせる場所が限られていた。

「2nd Room」は、客室を寝室に見立て、もう一つの部屋としてリビングのような場所を提供することで、この課題を解決した。グループの一部が客室で休む一方で、他のメンバーはパブリックスペースで翌日の作戦会議をしたり、思い出話に花を咲かせたりできる。

空間デザインがもたらす行動変容

グッドデザイン賞の審査委員は、このプロジェクトを次のように評価した。

「このプロジェクトでは、オープンスペースと居心地の良いプライベートルームを組み合わせて構成し、ロビーを24時間利用可能な『2nd Room(セカンドルーム)』に変え、テーマパークから帰ってきたゲストにもくつろぎ、集う空間を提供している」

「ホテルを単なる休息の場ではなくレジャーの延長線上にあるものとして捉え直し、利便性とムードを融合させている」

従来、ホテル業界では客室の快適性や食事の質が競争力の源泉とされてきた。しかし「2nd Room」は、パブリックスペースのデザインと機能性を高めることで、宿泊体験全体の質を向上させる新しいアプローチを示した。


今後の展望

ホスピタリティ産業への波及効果

この取り組みは、ホスピタリティ産業における空間デザインの新しい可能性を示唆している。特に以下の点で、他の宿泊施設にも応用可能だ。

第一に、グループ旅行者のニーズへの対応。家族、友人、職場の仲間など、多様な関係性の人々が一緒に旅行する際、全員が同じタイミングで休みたいわけではない。個人のペースを尊重しながらも、集団での時間を楽しめる空間設計は、顧客満足度を高める。

第二に、滞在時間の延長による収益機会の創出。チェックイン前やチェックアウト後も施設を利用できることで、宿泊者の滞在時間が実質的に延び、飲食や物販などの付帯収益の機会が増加する。

第三に、ブランド体験の強化。1955年のアメリカという明確な世界観を、客室だけでなくパブリックスペースでも一貫して表現することで、記憶に残る体験を提供している。

地域イノベーションとしての可能性

浦安市の新たな観光資源として、東京ディズニーリゾートとの相乗効果も期待される。テーマパークの混雑緩和や、周辺地域への経済波及効果という観点からも、このような快適な宿泊施設の存在意義は大きい。

開業から1年余りで拡張を実施したことは、市場からの評価の高さを示している。今後、他のテーマパーク周辺地域でも、同様のコンセプトを持つ宿泊施設が増加する可能性がある。


この事例から学べること

「2nd Room」の成功は、ユーザー中心のデザイン思考が、既存の産業に新しい価値を生み出せることを示している。

デザイナーの岡田氏が自身の体験から出発し、「グループの満足度を上げる」という明確な目的を持って空間を設計したこと。星野リゾートという組織が、その提案を受け入れ、実現に向けて投資したこと。そして利用者からのフィードバックをもとに、迅速に改善を重ねていること。

これらの要素が組み合わさることで、単なる「おしゃれなロビー」ではなく、利用者の行動を変え、体験の質を高める空間が誕生した。

ホスピタリティ産業に限らず、あらゆる産業において、既存の「当たり前」を問い直し、ユーザーの潜在的なニーズに応える設計思想は、イノベーションの起点となりうる。

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