
長崎県立長崎東高校の2年生9人が、戦前の白黒写真をAIでカラー化し、写真集として全国へ届けようとしている。被爆地・長崎に暮らす高校生たちが「自分たちにできること」を考え抜いて始めたこのプロジェクトは、現在CAMPFIREでクラウドファンディングに挑戦中だ。
被爆者の平均年齢86歳——「聞く」から「伝える」へ
平・相川・藤田・片山・三浦・森・本田・鈴山・澤山の9人は、長崎東高校の探究チームとして活動している。
厚生労働省の発表によると、被爆者健康手帳を持つ被爆者は2025年3月末時点で約9万9千人、平均年齢は86.13歳に達した。「体験を聞く」という継承のかたちが難しくなっていく現実に向き合いながら、9人は「次の世代が平和を”自分ごと”として考えられる方法」を模索してきた。
たどり着いたのが、AIによる白黒写真のカラー化だった。
東京大学・渡邉英徳教授のもとで技術を学ぶ
カラー化技術は、東京大学大学院情報学環・学際情報学府の渡邉英徳教授から直接指導を受けて習得した。渡邉教授は「記憶の解凍」プロジェクトを主導し、戦争や災害の記録写真をデジタルアーカイブ化する研究で知られる。著書『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社新書、庭田杏珠氏との共著)は第11回広島本大賞を受賞している。
白黒のままでは「資料」として眺めがちな戦前の風景も、色がつくと「身近な現実」へと変わる。9人はその力を信じて、一枚一枚の写真に向き合ってきた。
原爆資料館、東京大学……地道な活動の積み重ね
これまでに長崎原爆資料館での展示、文化祭でのガイド活動、東京大学での探究発表などを重ねてきた。アンケートを通じて来場者の声を集め、内容を磨き続けてきたという。
また、当時を知る方々から「この色は本当にこうだったのか」と確認を取る作業も大切にしている。カラー化は単なる技術ではなく、記憶と向き合う作業でもある。
全国29施設が寄贈を受け入れ
完成した写真集の寄贈先として、すでに29の施設から許可を得ている。
長崎県内の図書館・資料館に加え、東京大空襲戦災センター、ひめゆり平和祈念資料館、対馬丸記念館、立命館大学国際平和ミュージアムなど、全国各地の平和関連施設が名を連ねる。
さらに国連大学や国連本部への寄贈も目指しており、2026年1月には国連大学で、3月にはニューヨークの国連本部やハワイの高校での発表も予定している。12月には東京で開催される全国高校生フォーラム(WWL)での探究発表も控える。
製本費用をクラウドファンディングで募集中
写真集の内容はすでに完成している。あとは製本と発送のための費用だけ。しかし高校生だけではそのコストをまかなえない。
そこで9人はCAMPFIREでクラウドファンディングに挑戦することを決めた。目標金額は30万円。4,500円の支援で写真集1冊が届き、希望者は最終ページに協賛者として名前が掲載される。
「記憶が色あせないように」
「写真に色がついた瞬間、『戦前の人々は、確かに”生きていた”んだ』と胸が熱くなりました」
9人はそう語る。過去を学ぶだけでなく、自分たちの手で未来の平和をつくりたい。その思いが、このプロジェクトを動かしている。
記憶が色あせないように。長崎の高校生たちの挑戦は、いま全国へと広がろうとしている。
プロジェクト情報 「長崎の高校生がAIで戦前写真に色を添え、平和を未来へつなぐ写真集を創る!」 https://camp-fire.jp/projects/901102/view
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