おはなし/編集室

エンジニアを目指して勉強している大学生のうち、授業の課題ではなく、自分から手を動かして何かをつくっている人は、どれくらいいると思われるでしょうか。
株式会社サポーターズの桑原利旺さんが、挙げてくださった数字があります。
授業以外で制作していて、いまも開発を続けている作品がある。あるいは、インターンなどで開発を経験している。——そういう学生は、情報系の学生でも、10%くらい。
もう少し広くとって、ハッカソンなどで何かをつくったことはあるけれど、続けてはいないという人まで含めると、20%くらいまで広がるそうです。
裏返すと、8割から9割の学生は、授業の外でつくった経験がない。
ここで私たちは立ち止まりました。その人たちが、つくれない人だとは思えないからです。道具はある。時間もある。それでもつくらないのだとしたら、足りていないのは能力ではなく、たぶん別のものです。
つくっていいと思っていない。 そういう人が、その中にいるのではないか。
前回、私たちは「技育祭」という学生エンジニアの祭典をご紹介しました。東京・大阪・名古屋・福岡の4都市で開かれ、合わせて約1,200名が参加した催しです。
その主催者にお話を伺いに行ったのは、この10%の外側に、どうやって届くのかを知りたかったからでした。
伺って、最初に驚いたのは、入口の位置でした。
技育祭を含む「技育プロジェクト」という取り組みは、学年不問・参加無料です。就職活動を控えた大学3年生のためのものではありません。大学1年生でも、2年生でも、入れます。(学年不問ですので、中高生の参加も妨げられてはいません。)
なぜ、そこまで早い段階から場を開いているのか。
お話を伺ったのは、株式会社サポーターズの桑原利旺さん。同社の執行役員 ビジネスディベロップメント担当で、技育プロジェクト責任者を務めていらっしゃいます。

技育プロジェクトが掲げているのは、こういう言葉です。
学生時代の代表作を創る
桑原さんが繰り返しおっしゃっていたのは、この一点でした。
「『これを作りました、こういう話があります』って語れる状態になっているといいよね、と思っています」
作品をつくること、ではありませんでした。語れる状態になることでした。つくったものと、それについて話せる言葉。二つで一つなのだと、聞いていて思いました。(編集室の解釈です。)
そして桑原さんは、時代が変わりつつあることも感じていらっしゃいました。
「僕らが学生の頃と比べて、学生時代の代表作を持つ人が、すごく増えているんです」
理由のひとつは、AIです。
かつて、何かをつくり上げるには長い助走が要りました。いまは、詰まったところを聞ける相手が手元にいます。つくることの敷居が、下がりつつある。
道具は、届きはじめました。
けれど、道具があれば誰でもつくるかというと、そうではありません。つくる理由と、つくる仲間と、見せる相手がいります。技育プロジェクトがやっているのは、その三つを用意することでした。
ここで、先ほどの問いに戻ります。なぜ、学年を問わないのか。
桑原さんが会社に入ったのは2019年。当時、エンジニアを求める企業からは、同じ声が繰り返し届いていたそうです。
「エンジニアがもっと欲しい。採れれば、事業はもっと成長する」
けれど、その先に必ず続く言葉がありました。「そもそも、いない。足りない」。
そこで気づいたことがあります。世の中の就職支援は、大学3年生を中心に設計されている。大学1年生向けのものも、わずかにある。しかし——
学年を問わずに、つくることそのものを支える場は、ほとんど存在しなかった。
「意外と、ありそうでなかったんです」
代表作は、就職活動が始まってから慌ててつくるものではありません。1年生からでも、2年生からでもいい。それなら、入口は早いほうがいい。
技育プロジェクトは2020年に始まり、6年間でのべ65,000人が参加し、累計3,000件を超える制作物が生まれています。
とはいえ、と思われた方もいるはずです。
学年不問と書いてあっても、知り合いが一人もいない場に、はじめて足を運ぶのは勇気がいります。 技術もまだわからない。浮かないだろうか。ましてまだ1年生なら、なおさらです。
伺ったお話は、その心配にほぼそのまま答えるものでした。
もちろん、実際の雰囲気はその日次第です。それでも、はじめて来る人がいることを前提に場をつくっているという点は、踏み出す側にとって小さくない情報だと思いました。(編集室の解釈です。)
もう一つ、桑原さんが越えようとしているものがあります。
AIという技術に対する空気は、東京と地方で違うのでしょうか。そう伺うと、答えは明快でした。
「全然違います」
いちばんわかりやすいのは、身の回りに、実際に使っている人がいるかどうかだそうです。東京や大阪には、AIを実務で使っている職場がある。インターンなどでそこに関われば、実例が自然と共有されてきます。地方には、それが少ない。
「実際に使いこなしている人と、直接話すのが初めて、という学生がいます」
道具は届いた。けれど、使っている人が近くにいない。
だからサポーターズは、2023年から「技育CAMPキャラバン」という企画で地方をまわりました。京都、福岡、金沢、大阪、名古屋。オンラインで完結させず、現地に足を運んで場を開く取り組みです。(この企画自体は、現在は開催されていません。)
始まった年の規模は、1回あたり定員60名ほど。実際の参加者も、京都70名、福岡80名といった数字が公表されています。
60人の部屋を、3年。
2026年、技育祭が初めて地方でも開かれました。そのうち名古屋を含む東海の回には、約300名が参加したと発表されています。
60人の部屋をまわってきた延長で構想すれば、100人という想定は、むしろ自然でした。
そこに、約300名。
会場では、大学のサークルが、いつのまにか競い合いはじめていたそうです。どこが一番多く、後輩を連れてくるか。
「サークル同士で競い合う動きが起きて、驚きました」
主催者が仕掛けたことではありませんでした。学生が、勝手に始めたことでした。
「名古屋で起きて、めちゃくちゃ嬉しかった」
そしてこの地方開催は、一度きりの試みではなくなりました。同社は2026年1月、技育祭を年5回の開催に広げると発表しています。オンライン、東京、関西、東海、九州。前回の記事で「初の地方開催」と書いた催しが、定例になりました。
けれど桑原さんが「重要だった」と繰り返しおっしゃったのは、人数ではありませんでした。参加した人の内訳です。
およそ半分は、それまでにも似た活動に触れたことのある人。もともと関心があり、自分で見つけて参加してくれた層です。
そして残りのおよそ半分は——それまで何も知らなかったけれど、先輩や友人に誘われて来た学生でした。
「この、これまで知らなかった側の半分が参加してくれたことが、大きかった」
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
冒頭の10%を思い出してください。「代表作をつくろう」という呼びかけは、すでにつくりたいと思っている人には届きます。けれど、自分がつくる側になれると思っていない人には届きません。案内を見ても、自分あてだと思わないからです。
10%の外側にいる人たち。いちばん届きにくいのは、その人たちです。
名古屋で動いたのは、そこでした。
では、どうやって届いたのでしょうか。
桑原さんは、二つのことを並べておっしゃいました。
「先輩が後輩に、いろんな刺激を与えたいという気持ちは、もともとあるわけです」
「先輩が真面目に教えると、たぶん、お互い気を遣うと思うんです。僕らみたいな第三者が伝えることで、うまく吸収してくれる」
先輩には、後輩を連れていくことができる。けれど、伝える役はまた別だ、と。
近い人の言葉は、届く距離にあるぶん、受け取りにくいことがあります。「行こう」は聞けても、「こうしたほうがいい」は素直に入らない。教室でも家庭でも、心当たりのある話ではないでしょうか。
だから、二つの役割は分かれているほうがいい。
連れていくのは、近い人。伝えるのは、少し遠い人。(ここは編集室の解釈です。)
誘ってくれる先輩がいない人は、一人で来ます。
運営がいちばん気を配っているのは、その人のことだそうです。
「一人で来た人に対しては、めちゃくちゃレーダーを張ってます。声かけとか、すごくしますね」
一人で参加することが、どれほど緊張するか。運営側はよくわかっている、と桑原さんは言います。だから、溶け込みやすいように場をつくる。祭りのような空気にする。「主催者と参加者」という上下の構図が生まれないようにする。
「勇気を出して来てくれた。こちらもウェルカムだし、必ず何かしら受け取って帰ってもらえると思っています」
これは、技育祭に限らず持ち帰れる考え方だと思いました。人が集まる場をつくるとき、いちばん気を配るべき相手は、誘われずに、一人で来た人なのかもしれません。学校の行事でも、地域の集まりでも、同じはずです。(編集室の解釈です。)
うれしかった感想を伺うと、二つ挙げてくださいました。一つは「人生が変わった」という言葉。これは、前回の記事で私たちが引っかかった、まさにその言葉でした。もう一つは——
「このイベントがなかったら、参加していなかった」
そう言う学生が、相当数いるのだそうです。
規模の話になると、桑原さんは少し照れたようにおっしゃいました。
「その中で一人か二人でも、人生が変わったり、影響を受けたりすれば、と思っていて」
その一人ひとりに声をかけているのは、誰なのでしょうか。
運営を担っているのは、サポーターズ社の従業員に加え、「メンター」と呼ばれる約25人。桑原さんによれば、メンターは全員が社会人です。
学生ボランティアではありません。仕事を持っている大人が、学生の場に出てきて、後輩にあたる世代と一緒に場をつくっている。
サポーターズという会社は、ビジョンとして「カッコイイオトナを増やす」を、ミッションとして「自ら考え、自ら創る人を増やす」を掲げています。
「カッコイイオトナを増やす」という言葉が、運営の形そのものに出ていました。学生の前に、実際に大人が立っている。(編集室の解釈です。)
名古屋で動いた半分は、「自ら」来た人ではありませんでした。それでも、誘われて来た人がやがて自分でつくるようになり、次の誰かを連れていく。
「自ら考え、自ら創る人を増やす」は、一巡して初めて成り立つのかもしれません。(編集室の解釈です。)
そして桑原さんは、この先も見ていらっしゃいました。いまできているのは、つながりをつくって送り出すところまで。育成が何もできていないわけではないけれど、次は、もっと継続的な育成のところまで関わりたい、と。
桑原さんは長崎県で育ちました。親戚に教員が多い環境だったそうです。
学ぶことに迷いがあったわけではありません。迷っていたのは、その先でした。
「自分が将来何を仕事にしたいか、具体的に考えられてなかったんですよね」
大学は、将来の職業から逆算して選ばれたのではありません。学びたいことで選ばれました。 進まれたのは、京都大学の教育学部。教員養成ではなく、教育科学の分野です。理由は、「人間」について総合的に、深く学べるから。
原点は、もっと前にありました。小学3年生のころ、診断テストにのめり込んだ経験だといいます。
「自分の知らない自分を、教えてもらえるのが楽しくて。あと、人と人とで、こんなにも違いがあるんだって」
以来、桑原さんの好奇心は、技術そのものよりも、ずっと「人間」に向いているそうです。「人間って、どうなっているんだろう」——それが一番の興味関心だと、本人はおっしゃいます。いまは事業そのものにも、「総合格闘技のような面白さ」を感じていらっしゃるそうです。
並べてみると、一本の線になっていました。
小学3年生で、人はこんなに違うのかと気づいた。「人間」を総合的に学べる学部を選んだ。いまは、人と人が出会う場をつくっている。(編集室の解釈です。)
もう一つ、書き添えておきます。桑原さんは親戚に教員が多い環境で育ち、大学で学んだのも教育でした。それでも、教員を目指してはいませんでした。この話は、記事の最後にもう一度出てきます。
学びたいことは、はっきりしていた。けれど、それが何の仕事につながるのかは見えていなかった。代表作を持てなかった側にいた人が、いま、代表作をつくれる場所をつくっている。
心が折れそうになったことはありますか。そう伺いました。
「走り出したら、やるだけなので。その過程では、あんまりないです」
決めて、言って、周りを巻き込んで、進める。そこに迷いはあまりない、と。
では、緊張することはないのでしょうか。あります、とおっしゃいました。新しいことを始めるときや、方針を変えるときだそうです。
「新たに得られる価値をちゃんと伝えきれるか。言ったことを、自分がちゃんとやりきれるか。そこはやっぱり、めっちゃ緊張します」
恐れているのは、うまくいかないことではありませんでした。自分が伝えきれるか、やりきれるか。 向いている先が、外ではなく、自分の側にあります。
熱量がすごいですね、と申し上げると、これはきっぱり否定されました。
「溢れてないです。淡々と、やっている感じで」
最後に、絶対に外してほしくないことは何ですか、と伺いました。
返ってきたのは、ご自身の手柄の話でも、自社の宣伝でもありませんでした。
「会社がやっていることは、会社がやればいい。でも、学校でしかできない役割がある。僕は、そう思っているんです。だから、我々のような場を、うまく活用してほしい」
先輩は連れていく。第三者が伝える。——学校は連れていく。会社が伝える。
同じ構造です。だから「学校でしかできない役割がある」は、学校に丸投げする言葉ではなく、自分たちの役割の位置を、正確に置いた言葉なのだと思いました。(編集室の解釈です。)
先ほどの話に戻ります。桑原さんは、親戚に教員が多い環境で育ち、大学でも教育を学び、それでも教員にはなりませんでした。その人が、この取材でいちばん外してほしくないこととして挙げたのが、学校の役割でした。(編集室の観察です。)
では、何が続けさせるのでしょうか。
「抽象的で、答えがないものに対して、いろいろ試行錯誤するのが好きなんです。あとは、どうせやるなら、他の人にとっても何かいいことであればいいなと思っていて」
みんながハッピーになるといいですよね。そうおっしゃって、少しだけ笑われました。
ここからは、取材で伺った話ではありません。記事を書きながら、私たちが確かめたことです。
まず、前提が変わっていました。2022年度から、高校の「情報I」は必履修になりました。 全員が履修する科目です。学習指導要領(平成30年告示)が定める内容は四つあり、そのひとつが「コンピュータとプログラミング」です。
そして2025年度の大学入学共通テストから、教科「情報」の出題が始まりました。 2024年3月時点で、国立大学82校のうち、一般選抜で「実施する」としていたのは54校(66%)です。
いまの高校生は、文系であれ理系であれ、全員がプログラミングに触れています。
さらに、挑戦できる場も、私たちが思っていたよりずっとありました。日本情報オリンピック、パソコン甲子園、未踏ジュニア、セキュリティ・キャンプ、U-22プログラミング・コンテスト、中高生情報学研究コンテスト、全国情報教育コンテスト——記事の最後に一覧を載せます。無料のものも少なくありません。
ここまでは、良い話です。
けれど、一覧をつくっていて気づいたことがありました。
その多くが、17歳か、高校3年生で終わります。
未踏ジュニアは17歳以下。日本情報オリンピックは高校3年生以下。パソコン甲子園も、高校生ものづくりコンテストも、テック甲子園も、高校生までです。
では、その次はどこにあるのか。
未踏IT人材発掘・育成事業は25歳未満が対象ですが、2026年度は279件の応募に対して採択21件でした。SecHack365は25歳以下で定員40名程度、セキュリティ・キャンプ全国大会は22歳以下で定員80名程度。国際大学対抗プログラミングコンテスト(ICPC)は、参加できるのが大学・大学院・短大・高専4年次以上の学生で、高校生は対象外です。
狭き門か、大学生になってから始まるものか。
その手前——高校を出て、大学1年生、2年生になったあたり。ここに、学年を問わず、無料で、通年で開かれている場所は、多くありませんでした。
技育プロジェクトが立っているのは、たぶんここです。(編集室の解釈です。)
桑原さんの「意外と、ありそうでなかったんです」という言葉を、私たちは最初、控えめな言い方だと思って聞いていました。調べてみると、そのままの意味でした。
中高生向けの全国大会を並べていて、別のことにも気づきました。
学校を経由しないと出られないものが、少なくありません。
パソコン甲子園は、学校長の許可を得たうえで担当職員との連名で申し込む形です。高校生ものづくりコンテストは全国工業高等学校長協会の会員校が対象。全国高等学校情報処理競技大会は全国商業高等学校協会の会員校が対象で、県予選を勝ち抜いた学校のみ。全国中学高校Webコンテストは、コーチ1名が必須です。
工業高校、商業高校、高等専門学校には、道が整っています。
けれど、普通科で、情報系の部活もなく、詳しい先生も近くにいない生徒は、そこから外れます。本人のやる気とは関係のないところで、応募資格がない。
個人で応募できるものもあります。日本情報オリンピック、未踏ジュニア、U-22プログラミング・コンテスト、全国情報教育コンテスト、テック甲子園。
なかでも全国情報教育コンテストは、学校に在籍していない人の応募も認めています。 学校に通えていない時期がある子にとって、これは小さくない情報だと思いました。
この記事に出てくるのは、主に大学生の話です。けれど、いま知っておいてほしいことがあります。
大学に入ってから、就職活動が始まるまで待つ必要はありません。 1年生からでも、つくり始めていい。そういう場所が、無料で開かれています。
そして高校生のうちに出られる場所も、記事の最後にまとめました。お金がかからないものも、一人で応募できるものも、あります。
だからいま、何かに夢中になっているなら、それを続けていて大丈夫です。 ゲームでも、絵でも、機械いじりでも、プログラミングでも。「役に立つかどうか」を先に決めなくていい。つくったものは、いつか「これを作りました」と言えるものになります。
そして、学校に自分と同じことに夢中な人がいなくても、それは「向いていない」ということではありません。まだ会っていないだけです。
今回の取材で、桑原さんが最後におっしゃったのが、先ほどの「学校でしかできない役割がある。だから、我々のような場を、うまく活用してほしい」という言葉でした。
私たちはこれを、先生方へのお願いとして受け取りました。そして、お願いといっても、負担のある話ではありません。
紹介していただくだけで、足ります。
なぜ、これが先生にしか頼めないことなのか。理由が三つあります。
一つは、もう教えていらっしゃるからです。
「情報I」は必履修で、探究の時間もあります。生徒はすでに、つくることに触れています。あとは、その続きがどこにあるかを知っているかどうかだけです。
もう一つは、そこが手薄になりやすいからです。
大学のキャリアセンターへの調査では、支援に力を入れている学年として3年生の後期を挙げた大学が97.8%でした(ベネッセ i-キャリア、2024年)。文部科学省の調査でも、単位認定を伴うキャリア形成支援活動に参加した学生のうち、3年生が59.0%を占め、1年生は6.6%です(令和5年度)。
誤解のないように書き添えます。大学が低学年を軽んじているわけではありません。 同じ調査で、支援を始める理想の学年として1年生・2年生を挙げた大学は、合わせて73.6%にのぼります。やりたいけれど、手が回っていない。それが実態に近いようです。
そして就職活動そのものは、年々早まっています。2026年卒では、3年生の6月までに動き始めた学生が51.5%。2017年卒では6.4%でした(リクルート就職みらい研究所『就職白書2026』)。「3年生から」ですら、もう遅くなりつつあります。
だからこそ、大学の外にも場所があると知っていることに、意味があります。
そして三つめが、位置です。
高校の先生は、卒業していった生徒にとって、ずっと「連れていける人」であり続けます。「大学に入ったら、こういう場所があるよ」という一言は、大学の外からしか出せません。 大学の中の人は、まだその生徒に出会っていないからです。
なお、教える必要はありません。この記事に出てきた通り、連れていく役と、伝える役は、別の人が担ったほうがうまくいくからです。外部の方を招くのも、外の場所を紹介するのも、教える力が足りないからではありません。そのほうが届くからです。(編集室の解釈です。)
また、これは現場の判断だけの話ではないようです。同社の代表取締役社長である楓博光さんは、別の媒体のインタビューで、次のフェーズとして「学生のスキルやキャリアを大学1、2年から、なんなら高校生の時から磨いていくことを支援したい」と話していらっしゃいました(Focus on、2023年10月31日)。会社として、高校の時期を視野に入れているということです。
記事の最後に、【資料1】として技育プロジェクトの概要を、【資料2】として中高生のうちから出られる全国規模の機会を、それぞれまとめました。そのまま生徒に渡していただける形にしてあります。
できることは、たぶん一つです。いま夢中になっていることを、途中で止めさせないこと。
それは数年後、その子の「代表作」になっているかもしれません。役に立つかどうかは、あとから決まります。
もう一つ挙げるなら、連れていくことです。教えることではありません。「行ってみたら」の一言、行くための口実、行っていいという許可。それは、外部の人には出せないものです。
なお、【資料2】には参加費が無料のものを中心に載せました。交通費・宿泊費まで主催者が負担するものもあります。「お金がかかるから」で選択肢を外さずに済む場合があります。
桑原さんは、協賛企業の顔ぶれをもっと広げていきたいとおっしゃっていました。理由は資金ではなく、学生に見せられる進路を広げたいからだそうです。
子どもが思い描ける未来の幅は、目の前に現れた大人の職種の幅と、だいたい同じです。技術を使う場所は、いまや情報産業だけではありません。農業も、製造も、医療も、物流も、自治体も、技術を必要としています。けれどその現場にいる大人は、まだ子どもの前にあまり現れていません。
技育プロジェクトには、企業が関わる形も用意されています。協賛のほか、会場での交流や、開催の見学を受け付ける枠もあるそうです。出ていく理由は、採用のためだけではないのだと思います。
今日、家庭や教室で話してみるための補助線です。
この記事に出てきた数字は、二つです。10%と、半分。
授業の外でつくり、続けている学生は10%。ハッカソンなどで一度つくった経験まで含めても、20%。けれど名古屋の会場に来た人の半分は、それまで何も知らなかった人でした。知らなかった人が来る道は、ある。 それは案内でも広告でもなく、誘った一人でした。
これは、エンジニアの話に限らないと思います。学校の部活でも、地域の活動でも、たぶん同じです。入口の情報が足りないのではなく、最初に誘う一人が足りない。
高校では、全員が「情報I」を習うようになりました。習った人は、もう十分にいます。細くなっているのは、入口ではなく、その次でした。
もう一つ、私たちが持ち帰ったことがあります。連れていく役と、伝える役は、分けたほうがうまくいく。 近い大人は連れていく。伝えるのは、少し遠い人に任せる。これは、教える力の問題ではなく、届き方の問題でした。
前回、私たちは「もし近くになかったら、何人集まれば始められますか」と問いました。返ってきた答えは、人数ではありませんでした。最初に誘う一人でした。
つくれる時代は、来ています。あとは、そこに連れていく人がいるかどうかです。
未来は、いっしょに読むと少し近くなる。誘うと、もっと近くなります。
「学校でしかできない役割がある。我々のような場を、うまく活用してほしい」というお話がありましたので、先生や保護者の方がそのまま使えるよう、公表されている情報を整理しておきます。
| 企画 | 内容 | 形式 |
|---|---|---|
| 技育祭 | 国内最大級の学生向けテックカンファレンス。2026年は年5回(オンライン/東京/関西/東海/九州) | オンライン+会場 |
| 技育CAMP | ハッカソンと技術を学ぶ勉強会。年間100回以上 | オンライン中心 |
| 技育博 | つくったものを見せ合い、企業の人とも話せる交流会 | 会場 |
| 技育展 | 学生エンジニアのピッチコンテスト | オンライン+会場 |
※ 学校・教員向けの専用ページは設けられていませんが、生徒に伝えていただく分には、学生向けの入口をそのままお知らせいただければ足ります。学校で話してほしい、といったご相談は、上記の窓口へ。
技育プロジェクトの取材をきっかけに、編集室で調べたものです。2026年8月時点で各主催者が公表している情報に基づきます。日程・条件は毎年変わりますので、参加をご検討の際は必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
| 名称 | 主催 | 対象 | 費用 | 補足 |
|---|---|---|---|---|
| 日本情報オリンピック(JOI) | 情報オリンピック日本委員会 | 高校3年生以下 | 一次・二次予選は無料 | 一次予選はオンライン。年2回受験でき、1回目で振るわなくても再挑戦できます。女性部門(JOIG)が併願可 |
| 未踏ジュニア | 一般社団法人未踏 | 17歳以下 | 無料 | 採択されると開発資金(上限50万円)とメンターがつきます。イベントの交通費・宿泊費も支給。応募は例年3月末 |
| セキュリティ・キャンプ全国大会 | 情報処理推進機構(IPA) | 13歳以上22歳以下 | 無料(交通費・宿泊費含む) | 定員80名程度。選考は記述式の応募課題。まずは各地の「ミニキャンプ」から入るのが現実的です |
| 中高生情報学研究コンテスト | 情報処理学会 | 中学生・高校生・高専1〜3年 | 無料 | 探究や課題研究の成果をそのまま出せます。保護者または指導者が責任者として関わる形 |
| 全国情報教育コンテスト | デジタル人材共創連盟ほか(文部科学省共催) | 12歳以上18歳以下 | 無料 | 「学校等に在籍していない者も応募を認めます」と明記されています。最終審査は文部科学省講堂 |
| Waffle Camp | NPO法人Waffle | 女子・ノンバイナリーの中高生 | 無料 | オンライン回があり、全国から参加できます |
| Tech Runway | 認定NPO法人CLACK | 高校生年代(高校に通っていない人も可) | 無料(PC貸与・交通費支給) | 大阪・東京の教室。継続的に学べる場です |
| 名称 | 主催 | 対象 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 全国高等学校パソコンコンクール(パソコン甲子園) | 会津大学・福島県ほか(文部科学省・デジタル庁後援) | 高校生・高専3年まで | 学校長の許可と担当職員との連名で申込。プログラミング/モバイル/ポスタービジュアルの3部門があり、コードを書かない生徒も参加できます |
| 高校生ものづくりコンテスト | 全国工業高等学校長協会 | 会員校の生徒 | 8部門。交通費・宿泊費の一部補助あり |
| 全国中学高校Webコンテスト | 学校インターネット教育推進協会 | 中高生 3〜5人チーム | コーチ1名が必須 |
| テック甲子園(旧・アプリ甲子園) | ライフイズテック/丸井グループ | 中学生・高校生 | 個人・チーム・学校単位で応募可。プロダクト部門とアイデア部門があります |
| 名称 | 主催 | 対象 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 技育プロジェクト | サポーターズ | 学年不問 | 参加無料。通年 |
| セキュリティ・キャンプ全国大会 | IPA | 22歳以下 | 大学1・2年生も対象。交通費・宿泊費含め無料 |
| U-22プログラミング・コンテスト | U-22プロコン実行委員会 | 22歳以下(学生は28歳以下) | 応募は例年夏 |
| SecHack365 | 情報通信研究機構(NICT) | 25歳以下 | 通年。定員40名程度。学生は集合イベントの交通費・宿泊費が全額補助 |
| 未踏IT人材発掘・育成事業 | IPA | 25歳未満 | 2026年度は279件の応募に対し採択21件 |
| ICPC(国際大学対抗プログラミングコンテスト) | ICPC実行委員会 | 大学・大学院・短大・高専4年次以上 | 高校生は対象外。3名1チーム |
※ 費用の記載がないものは、公表資料で確認できなかったものです。応募前に主催者にご確認ください。
※ ロボット・組込み系のコンテストには参加費や機材費がかかるものがあります(1万円台〜)。この表では、まず費用の壁が低いものを中心に挙げました。
※ 本記事は、株式会社サポーターズ 桑原利旺さんへのインタビュー、および同社が公開している情報をもとに構成しています。事実の記述と編集室の解釈は本文中で区別しています。
※ ご発言の引用は、録音をもとに、文意を損なわない範囲で言葉を整えております。ご本人の確認を経て、表現を調整した箇所があります。
※ 楓博光さんのご発言は、他媒体(Focus on、2023年10月31日)からの引用です。
※ 教育制度・統計・他団体の事業に関する記述は、文部科学省、内閣府、情報処理推進機構、各主催者等の公表資料に基づく編集室の調査です(2026年8月時点)。
※ 数値は公表資料および取材時に伺ったものです。集計時点により変動する場合があります。
※ 掲載内容に誤りや権利上のご懸念がありましたら、編集室までお知らせください。確認のうえ、訂正・追記・非公開を判断し、必要に応じて更新日を示します。
Media Incubate Network
こどもの未来は、教育・AI・地域・仕事を考える入口です。相談や共創は、Media Incubate本体、産業創造、成長資本、千葉の地域共創、UniGrowthのハイクラス人材・AI人材・エンジニア・マーケターに特化した採用・人材紹介支援とつながりながら進めています。
代表取締役社長・浜崎正己の活動、会社の考え方、相談領域をまとめています。
産業創造挑戦者、企業、地域の取り組みを、記事・企画・事業開発につなげる産業メディアです。
成長資本資本政策、成長支援、承継、M&A、投資家との接点を編集して整理する関連ページです。
地域共創千葉の産業、研究、行政、挑戦者を、地域からの共創テーマとして育てます。
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各テーマは、公開情報、取材、編集判断に基づき、メディア、事業開発、地域共創、教育・人材、成長支援を一つの文脈で考えるための読み物と相談窓口として整理しています。