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2018.6.4
2018.6.4

AIにコピーライターは滅ぼせるのか?

AI連載    

今日はほとんどコピーライターのお仕事の話になってしまいそうなので、
前もって断っておきます。

テーマはAIコピーライターについてだけど、
コピーライターの話が多いです。すいません。

プログラミングの話はあんまり出てこないので
興味のない方は見なくても大丈夫です。
(見て欲しい気持ちはあるけれど)

では、はじめます。

産業革命の時代、仕事を追われた労働者は機械化に強く反発しました。

水力紡績機のアークライトは工場を破壊され、
飛び杼のジョン・ケイの周囲では何度も暴動騒ぎがあったそうです。

AIに仕事を奪われるかも。

そんな話が出てきた時も、世界中の人がザワッとしましたよね。

別に暴動は起こってないけど、「仕事を追われるんじゃないか」と
不安になった人はけっこういるはず。

AIコピーライターは、
そんな時代の流れの中で登場しました。

初めてニュースがタイムラインに流れた時、
ぼくも正直、ザワッとしたものです。

「え?ヤバイ、これ仕事奪われちゃうの?」

そう思いました。でも、そんな風に考えちゃう自分も
ヤバイなーと危機感を覚えました。

産業革命の時の労働者とおんなじですからね、それじゃ。

そのまま進化に乗り遅れて、仕事を失うのはそれこそヤバイ。
暴動起こそうが何しようが便利な方に時代は流れる。

進化を味方につけるくらいの気構えでないと、
ホントに仕事なんて簡単になくなる。歴史がそれを証明している(キリッ)。

・・・ということで、ぼくはとりえず、
AIコピーライターなるものに向き合うことにしました。

固有名詞を上げることはできないけど、
AIコピーライターの特徴はおおむね似ています。

過去のコピーなり、コピーライターのノウハウなり、
アルゴリズムを事前にディープラーニングさせておき、
必要な情報を与えてコピーを吐き出させるというもの。

そしてAIコピーライターに共通した特徴は、
一瞬で1,000本単位のコピー案が出せることです。

精度は学習させたアルゴリズムにもよるんだろうけど、
現状は当たり外れが多い感じ。

ただ正直、いま外に出ているものは「AIコピーライターが書いてます」という
PR狙いのものばかりなので、ホントのところはよくわからないです。
(※そんなこと言うと「PR狙いじゃねえよ!」とか怒られそうですけど)

実際の研究はもっと進んでいるのかもしれないし、
力技で無理やりなんとかしているだけかもしれないし。
そんなことは絶対ないと思いますけど、
ウソついてるだけかもしれないし(映画『ロボジー』的な)。
(※そんなこと言うと「ウソじゃねえし!」とか怒られそうですけど。)

ただ、この時点だけでも言えることは、
「とにかく案数を出すだけのコピーライター」の価値は下落するということ。

アルゴリズムの蓄積で、精度はどんどん上がっていくと思うので、
“とにかく案を出す”のはAIがやった方が早くなる。

少なくともクライアント企業はコストが抑えられるなら、
そっちの方がいいと思うはずです。

もちろん、いろんな切り口でコピーを大量に吐き出す作業は
コピーライターの能力を高める上で必要ですが、

そういったトレーニング的意義を度外視し、
クライアント視点でいうならば、
いっぱい出すのに時間をかけられるのは時に迷惑。

「数出すより早く出してくれよ」って
仕事はたくさんありますから。

では、コピーライターの仕事は奪われるのか?

全部じゃないかもしれないけど、
あるていどは奪われるとぼくは思っています。

まあ、「奪われる」という表現は
必ずしも適切ではない気もしますが…。

それが早いか遅いか、多いか少ないかは
なんとも言えないですけど。

だって、すごく乱暴に言ってしまうと、
案がサクッと大量に出るなら、
AIコピーライターを使って事業会社側が
単独で判断すれば事足ります。

一度導入してしまえば、
わざわざ代理店に頼む必要もない。

バナーとかwebは典型的。
それ以外にも単発の新聞広告とか、ポスターとかも可能でしょう。
案を出すだけなら店頭POPも十分いけそうです。

まあ、それもAIが出すコピーの精度が
上がっていけばの話ですが。

そうなると、案そのものを量産する能力よりも、
課題解決のための精度の高い決断ができる能力、
平たく言ってしまえば“いい案を選べる目”が
今まで以上に求められることになります。
(※ルーティーン化されているならその判断すらAIでできると思いますけどね・・・。)

そりゃあ人間にしかつくれないタイプの
切り口のコピーはあるのかもしれませんが、
目的が達成できて、コストが抑えられて、時間がかからないなら
人間にしかつくれないコピーである必然性はありません。

AIよりも圧倒的に結果に差が出せるなら話は別ですが、
そんなにクオリティが求められる仕事ばかりじゃないですし。

じゃあ、全部奪われるのか?というとそんなことはなくて、
ここは奪えないかなーと思うポイントもあります。

たとえば企業のビジョンに関わるレイヤーのコピーについては、
その内容を定義することは今のAIにはできないかなと思います。

過去の最適化だけでビジョンメイクするのは
企業の成長を滞らせる要因になりかねない。

志はAIにはつくれないって話です。
(※PARTYの中村洋基さんが同じようなことおっしゃってました。パクったわけではないですけど、まあ…、同意見ってことです…。)

企業のビジョンを決断するのは最終的には企業自身ではあるのですが、
コピーライターがその内容を言語化したり、サポートするケースは多いので、
そういった仕事は奪われにくそうだな、とは思っています。

他にも企業のビジネスの循環そのものを設計することはAIには難しそうです。

ただ、ビジョンメイクやビジネスデザインの仕事でなくても、
単純にコピーを書く仕事ですら、
現状ではAIが代用するにはいろいろ障壁があります。

難しい情報を伝わりやすくわかりやすく整理し直すこととかは
今のAIではなかなかハードルが高い気がします。

「わかりやすい」「わかりにくい」の判断が主観的すぎて
AIにはまだできないんじゃないかと。

このように、自分の仕事とAIを照らし合わせていくと、
奪われてしまいそうな部分と奪われなそうな部分が見えてきます。

どんなお仕事でも同じだと思いますが、
重要なことは、情報に踊らされずに冷静に見ることです。

今必要なことは、

  • 「AI時代がくる!だから俺の仕事は奪われるんだ!」と、過剰に悲観的になるのではなく、
  • 「AI時代と言っても急激に仕事は奪われないだろう」と、ぼやっと楽観視するのでもなく、
  • 「時代に合わせて副業だ!いいや、起業だ!」と、やりたいビジネスもないのに変によそ見するのでもありません。(※やりたいことがあったら話は別だけど。)

自分自身の目でAIの可能性と向き合い、
できることとできないことを把握して、
結果、奪われる範囲と奪われない範囲から
自分なりの戦略を設計することが重要ではないかと思います。

実際問題、AI技術が進めば仕事の大部分が
ほとんど機械でできてしまう職業についている場合は
将来的になくなると思って動いた方がいい。

スキルをプラスしていくのか、
まったく別のブルーオーシャンを探すのか。

いずれにしてもAIに向き合って判断しないといけないはずで、
なんの根拠もなしに闇雲に怖がるのも無視するのも
良くないことだなと思います。

自分で考えて、自分で決断する。
未来のことなのでとても難しいですが、
それをしなきゃいけない時代なのかなーと思います。

前回はまあまあ自由に書いたので、
今回はそこそこ真面目に書きました。

「オマエごときに言われたくない」と感じる発言もあったと思います。
すいません。でも、すべて読んでいただいて大変うれしいです。

次回は、AIがどうしてコピーライターの仕事を
全部奪えないかについて深く掘り下げて話します。

今回はけっこう固めに書いたので、
次はやわらかくマイルドにいこうと思います。

よろしくお願いします。

西畠勇氣