
「地域社会の活力を取り戻すために最も大切でありながら、現在解決策のない課題は、『働く場所』の問題だと考えています」
株式会社地域新聞社の代表取締役・細谷佳津年氏は、地方創生の本質についてこう語ります。
少子高齢化対策として、国は子供支援手当や教育支援、観光誘致など様々な施策を講じています。一方で、細谷氏は別の視点を持っています。
「地方では働く場所が少なく、さらに持続可能な企業も少ないため、若い方々が地域に住み続けることが難しくなっています。かつて、地域が子供を育て、隣近所で助け合い、鍵をかけない生活ができたのは、心豊かな人々が住んでいたからです。人がいなくなると、そうした温かいコミュニティを維持することが難しくなってしまいます」
地域に住んでいる方々の未来——それこそが、地域社会の持続可能性を考える上で最も大切な視点だといいます。
この課題に対して、細谷氏が取り組んでいるのが「地域共創プラットフォーム」という構想です。
その中心にあるのは、地域にある中小企業を持続可能にするという考え方。具体的には、「株式交付」(100%取得の場合は「株式交換」)という手法を用いて、非上場の地元優良企業を上場会社のグループ企業(子会社)として迎え入れることで、安定的な経営基盤を作っていこうとしています。
「職場が持続可能になれば、そこで働きたいと思う方が増え、地域に住み続けやすくなります。例えば、後継者問題などで廃業せざるを得ないと考えていらっしゃる老舗の飲食店などがグループ企業になることで、個人事業主から法人化することができます。福利厚生が整い、その企業やお店が安定的に続いていくという安心感を持っていただければ、若い方々も職場として選択しやすくなるのではないかと考えています」
そこで働く方々が収入を得て、住民となり、地域で消費していく。そうした循環によって、過疎化を解消し、地域経済が少しずつ活性化していく。地域企業の持続可能性を高めることが、地域の活力を取り戻す第一歩になる——細谷氏の構想には、地方創生の本質を捉えた視点があります。
地域新聞社は、千葉県を中心に約174万世帯に配布される地域密着型メディアです。この幅広いリーチ力を活かし、さらに読者層を拡大するべく、細谷氏は紙面上でも様々な取り組みを展開しています。
その一つのシリーズ企画が「私のまちの企業図鑑」です。
「地元の中小企業は、大手企業のように宣伝やブランディングに多くの費用をかけることが難しい状況です。でも、魅力的な会社、興味深い経営理念をお持ちの経営者の方はたくさんいらっしゃいます。それを地域の皆さんに知っていただく企画を行っています」
地域に根差した企業の中には、地域のお祭りを支援したり、地域活性化に大きく貢献している企業も少なくありません。
「地域への貢献度が高い企業のストーリーを伝えることで、『こういう会社で働いてみたい』と思う学生さんは必ずいらっしゃると思うんです」
もう一つが「PIAZZA~ちいきの広場~」というシリーズ企画です。イタリア語で「広場」を意味するこの企画では、地域の教育機関を紹介し、住民の皆さんと地域の魅力を繋いでいます。
「特に力を入れているのが、学校紹介です。地域の方々から『高校の特色を伝えてほしい』というご要望をいただきました。偏差値だけでなく、『この高校にはどんな特色があるのか』を伝えていく。例えば、特定の分野に力を入れている高校、専門的な教育に特化している高校といった特徴を紹介すると、親御さんからの反響が大きいんです」
親御さんも意外とご存じない、地域の高校の特徴。千葉県には27もの大学がありますが、偏差値以外の情報はあまり知られていません。メディアがこうした情報を丁寧に伝えることで、お子さんの進路選択の幅が広がり、地域の教育機関の良さが伝わっていきます。
企業紹介は、地域企業の採用支援としても機能しています。
地域には複数の金融機関や製造業など、様々な業種の企業がありますが、学生にとっては企業ごとの違いや特徴が分かりにくいのが実情です。
「それぞれの企業には独自の企業文化や強みがあります。でも、それがなかなか求職者に伝わっていない。ですから、『ちいき新聞』や『発見たんけん』という小中学生向けキャリア教育副教材、『Start!』という高校生向け就職支援冊子、『Overture』という筑波大学生向け就職支援冊子などで企業の特徴や魅力をきちんと伝えることが、採用のお手伝いになるのではないかと考えています」
こうした取り組みを通じて、地域企業と求職者の良いマッチングをサポートしています。
細谷氏が現在、特に力を入れているのが、地域企業と専門人材・成長人材をつなぐ採用支援・人材紹介の仕組みづくりです。
地域企業が事業を続け、次の成長に進むには、経営を支える人材、AIやデジタルを扱える人材、エンジニア、マーケター、事業開発人材との接点が欠かせません。地域に仕事を残すためには、企業の魅力を伝えるだけでなく、必要な人材と出会える仕組みを整えることが重要です。
「地域に良い会社があっても、その会社の魅力や働く意義が十分に伝わっていないことがあります。企業の言葉を整理し、必要な人材に届く形にしていくことが、地域の雇用を支えるうえで大切だと考えています」
細谷氏の構想は、地域メディアの発信力と、採用・人材紹介・成長支援を組み合わせることにあります。企業の魅力を記事や企画で伝え、関心を持った人材や専門家との接点をつくり、地域企業の持続的な成長につなげていく考え方です。
「千葉県内の27大学の学生さん、そして既に社会人になっているけれども返済中の方——ちいき新聞を読んでくださっている方なら、このサービスを知る機会があります。親御さんに知っていただければ、息子さんや娘さんにご登録を勧めていただけるかもしれません」
一方で、細谷氏は人材紹介事業をより充実させていくための課題についても語ります。
「登録者を集めることは、コンセプトと自社メディアがありますので強みを発揮できると思います。採用企業の求人も、当社は年間約7,000社とお取引があるため獲得できる見込みがあります。ただ、登録してくださった方に対して、どの企業が合うのか、キャリアについてのアドバイスをする——この部分をより充実させていく必要があると考えています。これは求職者の方の人生、そして採用企業のためにも、大切にしていきたい部分です」
細谷氏は、社内での機能構築や外部との連携など、様々な選択肢を検討しながら、サービスの質を高めていく方針です。
「登録者が増えれば求人も増え、求人が増えれば登録者も増える——そうした良い循環を作っていきたいと思っています」

※写真右は地域新聞社 広報の廣田 瑞穂氏
細谷氏の取り組みに共通しているのは、「地域メディアの力」を最大限に活用していることです。
約174万世帯というリーチ力は、全国的に見ても非常に大きな規模です。「行政との繋がりも強化しており、市長インタビュー記事を掲載しているのですが、ある市長様から大変お喜びのお礼をいただきました。首長さんや自治体職員の方々にも身近な存在として認識していただいているんです」
メディアとしての信頼性、ブランド力、そして配布網——これらを活かすことで、地域の教育機関、企業、そして求職者の皆さんを繋ぐプラットフォームを作ることができます。
「私たちの使命は変えずに、持っているものの活用方法を変えることで、こうした取り組みができると考えています。フリーペーパーを作っている会社というイメージから、地域のためのプラットフォームへ——それが私たちの目指す姿です」
細谷佳津年氏が描く「地域共創プラットフォーム」は、単なる企業戦略ではありません。地域に住む方々の未来、若い世代の人生、中小企業の持続可能性——そのすべてを繋ぎ、地域社会全体を元気にしていこうという大きな構想です。
「働く場所が持続可能になることで、人が住み続けやすくなり、消費が生まれ、地域が活性化していく。地域の活力を取り戻すその第一歩を、私たちが担っていきたいと考えています」
地域新聞社が東証グロース市場に上場し、着実な成長を続ける今——細谷氏の挑戦は、地方創生の新たなモデルケースとなる可能性を秘めています。
株式会社地域新聞社
代表取締役:細谷佳津年
事業内容:地域密着型フリーペーパー『ちいき新聞』の発行、地域共創プラットフォーム事業
配布エリア:千葉県を中心に約174万世帯
上場:東証グロース(証券コード:2164)
本社:千葉県八千代市勝田台北1-11-16
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