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2018.2.1
2018.2.1

既に変化は始まっている!AIで激変する学びと働き方【第1部:学校教育編】

~デジタル学習がなぜ今後必要になるのか~その必要性を増すeラーニングの利点と可能性

オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らによる論文『雇用の未来――コンピューター化によって仕事が失われるのか』が私たちに衝撃をもたらしてからまだ日が浅い。この論文によれば、ロボティクスやAI(人工知能)の発展によって、現在ある職種のおよそ半数はそれらに取って代わられてしまうというのだ。

特にわが国では、「そんなことはあり得ない」と思っている人がまだ多い。もちろん、この研究成果のとおりに事が運ぶかどうかはわからないが、いずれ近い将来、多くの職業がAIやロボットが主流になるであろうことは想像に難くない。そんな時代に、私たちの学習環境、働く環境、生涯学習の環境はどのように進化発展することが必要とされるのか。

本稿では、「デジタル学習がなぜ必要になるのか」を、日本の学校教育と企業との2部に渡って論じてみたいと思う。

第1部 学校教育の現場は劇的に進化している(本記事)
第2部 企業におけるアクションラーニングの現状と将来

大人は知らないデジタルネイティブ世代の学び方

かつて、スマートフォンどころかまだ携帯電話もこの世になかった時代に、「コンピュータ学習」(Computer Aided Education)なる言葉が生まれ、「教育から学習へ」というテーマが盛んに論議されたことがある。

どういうことかと言うと、集合教育で、言葉の通り、他者から教えられ、育てられる環境から、自ら学び習得していく環境に代わっていくということを意味した。その助けを今後、コンピュータがしていくだろうと言うわけだ。

もっとも、そう簡単には行かなかった。本当に「教育から学習へ」という変化が劇的に進み始めるためにはインターネットの登場が不可欠だった。
そう、今では多くの人が自分のPCやスマートフォンといった身近なデバイスを使って、インターネットを介して、多くの情報や知識に簡単にアクセスして、自ら学ぶことが可能になっている。

そうした環境は、PCやスマートフォン、インターネット、eメール、SNSなどのデジタルデバイスに拒否感がない限り、年齢を関わらず誰にでも用意されている時代と言っていいだろう。

とは言え、やはりそこは若い人のほうが柔軟だ。彼らは物心がついたときから身近にゲーム機をはじめ、各種のデジタルデバイスがあり、それらに接しているからだ。赤ちゃんがタブレットを指で操作して、幼児用のソフトをいじっている姿などを見る機会もあるほどだ。

学校環境はどうだろうか。21世紀スキル習得のための学習指導要綱が大幅に改定された。教育ICTがうたわれ、2020年には電子教科書+タブレットが最終的には一人1台配られる予定だ。学びのスタイルは、印刷媒体の教科書をめくっていくというものから、電子教科書へ、さらに教育クラウドを活用したスタイルへと進化していくだろう。

教育ICTが普及すれば、子どもたち個々の学習履歴、テスト結果、そこから分析される理解状況を教師が簡単に把握することができて、質の高い指導ができるようになるだろう。ただ現状では、生徒視点で学習管理に活用されているのはごく一部で、校務支援に利用されているケースが多いようである。先生たちのリテラシーがまだまだ追いついていない。この先、5年から10年で教育現場は、まさに未来仕様に変わっていくはずだが、利用する先生・生徒たちがしっかりと価値を見出し、活用していくことが重要になってくる。

では、それに先立って現在の子どもたちを垣間見てみよう。たとえば1990年生まれの若者は、彼らが17歳のとき、つまり2007年にすでにスマートフォンを使い始めていた。まさにデジタルネイティブなのだ。SNSはもちろん、YouTubeやインスタグラムなどの動画を使って情報収集を行い、頻繁に他者とコミュニケーションを取るのが当たり前になっている。

2011年から開始したリクルートの『受験サプリ』は、現状、5教科18科目の講師の授業がPC・スマホで見放題というオンライン予備校『スタディサプリ』(月額利用料980円~)となり、スマートフォンで動画視聴して勉強するというスタイルが定着化した。
このサービスの利用者は、2017年に40万人の有料会員が利用する規模になっている。

もちろん学習事業社も黙ってはいない。ベネッセとソフトバンクが合弁子会社のClassi社の提供する学習支援サービス「Classi」は2,000校77万人以上に導入され、校務支援・授業における活用が進んでいるし、大手予備校なども、デジタルを活用した学習スタイルが一般化してきている。

倍速視聴は当たり前!デジタルネイティブ世代の情報収集

デジタルネイティブ世代は、24時間、いつでもどこでも、自分が必要なときにオンライン学習することを望む。

弊社では、マイクロソフトの最新クラウド技術Azureを使った企業向けeラーニングシステムとして、次世代型LMS「etudes(エチュード)」を開発した。これは進化し続けるシステムで、eラーニングの受講管理および動画などの教材管理・配信を行うシステムだが、クリエイティブ系の専門教育機関である株式会社バンタンが提供する『Vantan FLIP CHANNEL』での採用事例を紹介しよう。

Vantan FLIP CHANNEL
http://vantan.etudes.jp/

eラーニングの導入によって反転学習を行い、学習効果を高めている例だ。つまり、本講義を受ける前に学生はeラーニングで提供される動画の事前視聴(予習)を行うことで、基礎的な理解を先に済ますというスタイルが推奨されている。その上で本講義を受けるわけだが、その後にまたeラーニングによって復習を行う。こうした反転学習が予備校などでは徐々に当たり前になっている。

10代の学生は、全員がスマートフォンにより視聴を行うのだが、当倍速では見ない。1.5倍ないし2倍速での倍速視聴が当たり前だ。我々が紙媒体で行っている飛ばし読みで全体の雰囲気を理解する方法に似ているが、『スタディサプリ』も含め、情報収集に通常の時間を掛けないというのはデジタルネイティブ世代の特徴のようだ。情報収集だけではない。ドラマも同じだというから驚く。

それはさて置き、予備校では予習後に小テストを行うと効果はさらに高まる。なぜかと言うと、小テストや動画再生記録によって、間違いが多い箇所、何度も見るところなどから全体のウィークポイントがわかる。本講義ではその部分を重点的に補うということができるのだ。

AIに合格までの最適ルートをレコメンドされる時代

近い将来の主流は、機械学習機能(アダプテッドエンジン)であろうと思っている。ウィークポイントの抽出を、全体最適のためだけでなく、個別指導のためにも行う。間違った問題から、個々人の弱点、傾向を分析・把握し、そこからそれぞれの理解度、学習進度を知り、その情報から最適な学習計画を練り、常にその人の習熟度に合わせて教材やカスタマイズした問題をレコメンドするというものだ。
具体的に言えば、人により、次に掲示する問題が変わるというわけだ。そんな時代がもう目の前まで来ている。

受験勉強に限って言えば、生徒それぞれの学習履歴に基づいて合格までの最適ルートを提示することも可能になる。志望校合格に向けた最も効率的な学習方法を毎日レコメンドする。ただ勧めるだけではなく、その理由も明示すれば、納得度の高い学習ができるだろう。簡単に言えば、志望校の問題の傾向も熟知したAIが、個別の状況に最適化された問題を次々に出していくわけである。画面上では、自身の学習進捗度合いも一目でわかる。それを見て、自律的に不足箇所を反復学習することもできる。いわば、頭のいい人間の学習方法が誰にでも提供されるということになる。早ければ5年でそんな時代が当たり前になると予想されている。
教科書を1ページ目から勉強する時代ではなくなる。紙の教科書すらなくなっていくのかもしれない。そうして、時間も場所もデバイスにも縛られない学習環境が整備されていく。それを実現するのがクラウド型のeラーニングシステムによって提供されるデジタル学習なのだ。


次章では、労働人口の約49%がAIやロボティクスで代替可能とされている日本において、デジタルネイティブ世代とそれ以上の世代でどのような違いが出るか、企業におけるアクションラーニングの現状と将来をご紹介したい。

こどものミライ