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2017.3.14
2017.3.14

プログラミングが嫌いになる原因と、好きになる環境の選び方

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文部科学省が、2020年から小学校でのプログラミング教育の必修化を検討しています。
私は毎朝3時間アプリ開発をしてから出勤するくらいプログラミングが大好きなのですが、プログラミング教育の必修化については懸念があります。

子どもがプログラミングを嫌いになってしまうことです。

英語教育で起こったばかりの問題

英語教育で既に、同じことが起こっているように感じないでしょうか?
英語教育を通じて、英語が好きになった子どもと、嫌いになった子ども、どちらが多いでしょうか?
嫌いになった子どもは、何故嫌いになってしまったのでしょうか?

おそらく、とても大きな要因の一つに「興味のない知識を詰め込まれること」があります。
学校の授業で「この場合は目的格の関係代名詞になるので、“whom” を使います」などと、複雑な文法を教えられます。
複雑な文法を熱心に学ぼうとする学生がいたとしても、その動機の9割は「より偏差値の高い学校に進学するため」であって、文法そのものに対する興味ではないと思います。
こういった「お勉強」を重ねても英語が話せるようにはなりませんし、何より、学ぶことの楽しさが失われてしまいます。
しかし、本当は語学というのは、もっと感情を伴って身に付けていくものなのではないでしょうか。
初めての飛行機で「ウォータープリーズ!」と言って、何故か全く通じなくて悔しかったり、
その後、カタカナ英語は真実からは程遠い発音であることに気付いてショックを受けたり、
旅先のコーヒー屋で、砂糖とミルクの注文はまだ難しいために仕方なく注文したブラックコーヒーの苦さを噛み締めたりして、体験を通じて身に付けていく方が身につくような気がします。

もちろん今の教育が無駄だなんて言うつもりはありませんが、それでも、詰め込み教育の問題を抱えているのは事実だと思います。

プログラミングが好きになるような学び方

プログラミングの場合では、プログラミングが好きになるような学び方とは、どのようなものなのでしょうか。
子どもが作りたいものがあって、必要な時に先生のサポートを受けながら、形にしていくようなものだと私は考えます。
何かを作ろうとプログラミングをすると必ず、「何故か分からないが、思うように動いてくれない」という問題に直面します。
その時に良い先生がいれば、「ああ、ここがおかしいよね」と、間違いを正してくれたり、「こうするともっと綺麗に書けるよ」と、よりレベルの高い技術を教えてくれたりします。
教えてもらったことを踏まえてプログラムを少し直すと、自分が作りたかったものが、目の前で動き出します。
これはすごく嬉しいことだと思います。

そうして、問題に直面して、解決して、より良いやり方を覚えていくに連れて、だんだん自分でできることが増えていきます。
少し時間をかければ、自分でスマートフォンのアプリを作って、世界中に配信することもできます。
そのうち、誰かが「面白かったよ」とか「もっとこういう機能があると良いと思う」などと意見をくれます。
誰かが喜んでくれることは純粋に嬉しいですし、より良いものを作ろうと考えを巡らせるのはとても楽しいことです。
実際に、そのようにプログラミングに夢中になっている学生を見たことがあります。
中高生のためのアプリ開発コンテスト「アプリ甲子園」という大会の参加者たちでした。
個性的な作品を堂々と発表する彼らは生き生きとしていて、「やらされている感」は微塵もなく、その目は直視するのが辛いくらいにキラキラと輝いていました。

何かを作りたくなる環境の見つけ方

では、子どもが自発的に何かを作りたいと思えるような環境は、どうやって探せば良いのでしょうか。

【プログラミング教室】
プログラミング教室を探す場合は、一概には言えませんが、一つ役立ちそうな視点があります。
授業外で自発的に制作している子どもがどれだけいるか」というものです。「自発的にやっているかどうか」を一目で見分けるのは難しいことですが、「授業外に制作しているかどうか」はある程度知り得ます。具体的には、子どものことを把握している立場の人に、「授業外で子どもが作ったものはどんなものがありますか?」などと聞けば良さそうです。
多くの子どもが授業外で制作をしているようであれば、その教室は、先生の教え方が絶妙なのかもしれませんし、子ども同士が刺激し合うような雰囲気があるのかもしれません。
いずれにせよ、何か子どもの創作意欲を引き出すような要素がある場合が多いと考えて良さそうです。

【公教育化について】
文科省が必修化を検討しているような学校教育では、相当上手く考えられたやり方でないと、自発的に何かを作りたいと思ってもらうことは難しいと思います。子ども一人一人にかけられる時間も短くなるでしょうし、プログラミングに対する知識や熱意を持った先生を全国の学校で集めることも難しいでしょうし、学習内容が指導要領として標準化されることで柔軟な対応が難しくなることもあるかもしれません。もし、公教育でプログラミングが好きになるような環境を作るのであれば、教員個人の知識や技術などに依存しすぎない仕組みが必要になります。
まだ具体的にどのような指導が始まるのかは分かりませんが、前述のような課題は解決すべきものだと思います。

いずれにせよ、学校教育で必修化されていない現在、子どもがプログラミングを学ぶには、プログラミング教室等の環境を探すことが現実的になりそうです。前述の「アプリ甲子園」に参加していた目をキラキラさせた学生の多くも、話を聞くとプログラミング教室に通っていたようでした。
そして、プログラミング教室の先生に絶大な信頼を寄せていました。
プログラミング教室から帰って来た子どもが「今日はこんなのを作ったんだよ」と嬉しそうに語る姿は、涙が溢れるほど素敵なものです。(想像ですが)
そのためにはまず、子どもがプログラミングを好きになること、何かを作りたいと思うことが大切なのではないでしょうか。

Illustration : Jung Bin Cho

戸田大介