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2024.7.24
2024.7.24

未来を紡ぐ観光の新潮流:いくさか『創造の森』リジェネラティブ・ツーリズムの挑戦


はじめに
近年、持続可能な観光のあり方が世界的に注目を集める中、長野県生坂村で画期的な取り組みが始まっています。株式会社大広を中心とした企業コンソーシアムが支援する「いくさか『創造の森』リジェネラティブ・ツーリズム」プロジェクトは、従来の観光の概念を覆し、地域と訪問者が共に成長し、自然環境を再生させていく新しい観光のかたちを提案しています。本記事では、このプロジェクトの詳細と、それが持つ可能性について深く掘り下げていきます。

リジェネラティブ・ツーリズムとは
まず、このプロジェクトの核心となる「リジェネラティブ・ツーリズム」について理解を深めましょう。リジェネラティブとは「再生させる」という意味を持ち、これまでの消費中心の観光とは一線を画す概念です。
リジェネラティブ・ツーリズムの特徴は以下の通りです:
1. 訪れた土地の自然環境や文化を深く学ぶ
2. 適切な手法で環境に手を加え、より良い状態に再生する
3. 観光客と地域住民が共に活動し、相互に学び合う
4. 一回限りの体験ではなく、継続的な関わりを持つ
5. 地域の持続可能性向上に貢献する
このアプローチは、単に自然を楽しむだけでなく、積極的に環境の再生と向上に参加することで、観光がもたらす負の影響を最小限に抑えつつ、正の影響を最大化することを目指しています。

いくさか『創造の森』プロジェクトの概要
長野県生坂村で実施される「いくさか『創造の森』リジェネラティブ・ツーリズム」は、観光庁の「第2のふるさとづくりプロジェクト」モデル実証事業の一環として企画されました。「いくさか『創造の森』」を舞台に、全6回のツアーが実施される予定です。プロジェクトのテーマは「ネイチャーポジティブと何度も訪れたくなるふるさとづくり」。参加者は、生物多様性に関する様々な情報や体験を通じて学びを深め、最終的には「生坂村公式ネイチャー研究員(フェロー)」として認定されます。

このプログラムの特筆すべき点は、以下の通りです。
1. ハイブリッド形式の採用:オンラインとオフラインを組み合わせることで、より多くの人々が参加できる機会を創出しています。
2. 多様な体験の提供:生き物の生態や自然の知識を学ぶだけでなく、実際に自然調査や再生活動に参加することで、深い理解と実践的なスキルを身につけることができます。
3. 地域との交流:村内の方々との交流を通じて、地域の文化や課題について理解を深める機会が設けられています。
4. 専門家によるガイダンス:立教大学の奇二正彦准教授を講師に迎え、学術的な裏付けのある内容が提供されます。
5. スポーツとの連携:生坂村をホームタウンとするJリーグチーム・株式会社松本山雅からもガイド候補生が参加予定で、スポーツと環境保護の融合という新しい視点も提供されます。

プロジェクトを支える多様な連携
このプロジェクトの特徴の一つは、多様な企業や団体が連携してコンソーシアムを形成していることです。参画している組織と、それぞれの役割は以下の通りです。
1. 株式会社大広:広告・PR・マーケティングの知見を活かし、プロジェクトの認知拡大と参加者募集を行います。
2. 生坂村:地域の自然環境と文化資源を提供。地域住民との連携や行政面でのサポートを行います。
3. 株式会社松本山雅:スポーツの視点から自然環境の重要性を伝え、若い世代の参加を促進します。
4. クラブツーリズム株式会社:ツアー運営のノウハウを提供し、参加者の安全と満足度の向上を図ります。
5. 株式会社フューチャーセッションズ:未来志向の対話の場づくりを担当し、参加者と地域住民の交流を促進します。
6. 合同会社HiTTiSYO:プロジェクト全体の企画・運営を担当。地域の自然や文化に関する深い知識を提供し、プログラムの質的向上に貢献します。
この多様な連携により、プロジェクトは多角的な視点と専門性を獲得し、より豊かで意義深い体験を参加者に提供することが可能となっています。

プロジェクトの背景と意義
このプロジェクトが生坂村で実施される背景には、同村の特徴的な取り組みがあります。生坂村は2023年に環境省の「脱炭素先行地域」に選定され、「生坂村ゼロカーボンシティ宣言」を発出しています。これは、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという国の目標に先駆けて、地域レベルで脱炭素化を推進する取り組みです。

こうした背景を持つ生坂村でリジェネラティブ・ツーリズムを実施することの意義は大きく、以下のような効果が期待されます。
1. 環境保護と経済活動の両立:観光という経済活動を通じて環境保護を推進することで、持続可能な地域発展のモデルを示すことができます。
2. 地域アイデンティティの強化:自然環境や文化を再評価し、磨き上げることで、地域の独自性と魅力を高めることができます。
3. 新たな関係人口の創出:「第2のふるさと」として生坂村に関わる人々を増やすことで、過疎化や高齢化といった地方の課題解決にも寄与します。
4. 環境意識の向上:参加者が実際に自然再生活動に携わることで、環境問題への理解と行動変容を促すことができます。
5. イノベーションの創出:異なる分野の企業や専門家が協働することで、新たな価値や解決策が生まれる可能性があります。

今後の展望
いくさか『創造の森』リジェネラティブ・ツーリズムプロジェクトは、観光のあり方を根本から問い直す挑戦的な取り組みです。今後の展開として、以下のような可能性が考えられます。
1. モデルケースとしての確立:このプロジェクトの成果を検証し、他の地域にも適用可能なモデルとして確立することができれば、日本全体の持続可能な観光の発展に寄与することができます。
2. 長期的な環境モニタリング:参加者が「ネイチャー研究員」として継続的に関わることで、長期的な環境変化のデータを収集し、学術研究や環境政策に活用することができます。
3. 地域ブランディングへの発展:リジェネラティブ・ツーリズムの成功は、生坂村のブランド価値を高め、移住促進や産業誘致にもつながる可能性があります。
4. 教育プログラムとの連携:学校教育や社会人教育と連携し、環境教育の実践の場として活用することで、より広範な影響を及ぼすことができます。

結びに
いくさか『創造の森』リジェネラティブ・ツーリズムプロジェクトは、観光と環境保護、地域振興を有機的に結びつける革新的な取り組みです。このプロジェクトの成功は、単に一地域の発展にとどまらず、日本全体、さらには世界の持続可能な観光のあり方に一石を投じる可能性を秘めています。
私たちメディアも、この取り組みの進展を注意深く見守り、その成果と課題を広く社会に伝えていくことで、持続可能な未来の構築に貢献していきたいと考えています。リジェネラティブ・ツーリズムという新しい観光のかたちが、私たちの社会にどのような変革をもたらすのか、今後の展開が大いに期待されます。
(こどもの未来編集部)

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