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2019.9.5
2019.9.5

世界のプログラミング学習はこんなに進んでいる!中国編

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2020年4月の教育指導要領改訂を機に、日本の小学校でもプログラミング必修化が始まる事を多くの方がご存知かと思います。

振り返ってみれば、これまでも多くの小学校に「コンピューター室」があり、30-40台のパソコンをクラスごとに使って授業をする事はごく一般的でした。しかし、世界の先駆的なプログラミング学習事例を見ていくと、コンピューター室のパソコンに向かってただただタイピングをする授業から、タブレットのような機動性の高いデバイスにアプリケーションをインストールして、子どもたち自身が自発的に問題意識を持って学習に取り組むというような成功事例が多く見られます。

今回の記事では、テクノロジー大国・中国のプログラミング教育をご紹介しながら、日本の今後について考察していきます。

親のリテラシーを超える!中国のこどもたちのプログラミング学習意欲

ZDNet Japanによると、中国語版プログラミング言語学習環境「Kitten(編程猫)」の開発会社が実施した調査から興味深いデータが明らかになったとの事。

同社が、9歳~14歳の利用者を対象に実施したアンケートの結果、子どもたちの9割弱は「自身の興味があるからプログラミングを学習している」と回答したのに対して、親世代の6割以上がプログラミングとは何か理解できていないと答えたといいます。これは、中国では、子どものテクノロジー教育よりも目先の受験のほうが、将来の就職のために重要と考える親が多いことも背景と考えられます。

しかしながら、親世代のICTリテラシーをはるかに上回り、将来の社会で求められるスキルの先見性を持っているのはどうやら子どもたち自身の様だと分かります。

「プログラマーになりたい」その背景にあるものは?

中国といえばテクノロジー企業が凄まじい勢いで成長して全世界を驚かせています。メッセージングアプリWeChatで知られるテンセントも従来のゲーミング事業からソーシャルネットワーク、さらにはオンライン決済まで多角化を進めています。かつて中国はテレビ用の同軸ケーブルやICチップ、家電などのハードウェア生産拠点でしたがその強みを残しつつ、ソフトウェア開発分野においても力をつけているのです。

2019年BrandZ™から発表された世界トップ100ブランドを見てみると100社中15社が中国の新興テクノロジー企業です。一方で日本企業でランクインしているのはトヨタ(41位) 、NTT (70位) の2社のみであることを見ると、中国企業の勢いに驚かされます。(詳細レポートはこちら>BrandZ Top Global Brands)

このような環境のなかで中国のこどもたちは育ち、将来を夢見ます。最近では、多くのこどもたちは将来「プログラマー」になり人工知能(AI)やIoTをはじめとした技術の活用に貢献したいと答えるといいます。

しかし、実は、アメリカでは小学生から高校生の間に約68%がプログラミング学習の機会があるのに対して、中国では1%程度に留まっているといいます。

子ども達の学習意欲が高い一方で、「中国国内の貧富の差」「都市部と地方の教育機会の差」がその様な学習機会の差を産んでいる様です。

では、こうした学習機会の差を中国ではどの様に埋めているのでしょうか?

「教師不在」のオンラインプログラミング学習“Kitten(編程猫)

学校に来たくても来られない子ども達への学習機会や、自宅学習の場面でも広く活用が期待されているのが、「Kitten(編程猫)」です。


「編程猫」のプログラミング画面(出所:腾讯科技)

「Kitten(編程猫)」はScratchに似た中国語版プログラミング言語学習環境で、最大の特徴は、機械学習を活用した自動対話システムで、その場に教師がいなくても不明点を質問しながら学習を進めることができる点です。


機械学習による「仮想教師」とのコミュニケーションが可能(出所:芥末堆)

これにより、子どもたちは時間や場所に縛られずに、自律的な学習ができる様になったといいます。

日本のプログラミング教育の課題とは?

文科省が今年2~3月、小学校を所管する全国1745もの教育委員会を対象に、準備の進み具合や課題について調査したところ、51.7%が「そもそも何から手をつけたらよいのか分からない」「どのような支援が必要か分からない」など、理解不足による課題を抱えていることが判明しました。

また、平成30年度に先行授業を実施した割合は市区教委が71.5%だったのに対して、町村教委などでは31.9%と大きな差が出ており、その理由の一つが予算不足にある様子。

無線LANの整備や、子ども達に配布するタブレットなどの機器購入など、規模の小さな自治体にとっては決して安くはなく、こうした実情も鑑みて文科省では準備の遅れている自治体への支援を積極的に行っていく方針を示したそうですが、2020年度からのプログラミング必修化に向けて、ハード面だけでなく、肝心の学習カリキュラムや、教える先生のリテラシー向上という課題もありそうです。